6月の鳥取旅。アルコール9%ストロング氷結を握りしめて、降り立ったのは山陰本線鎧駅。駅前に数軒の民家があるだけの小さな無人駅だが、ホームからのどかな漁港と日本海を見晴らせる絶景駅だ。
こういう仕事をしていながら、今まで降りる機会がなかった。ぜひ行きたいけど、この日は行きたいところが多すぎて難しいかな、と思っていたのだが、時刻表と格闘したら16分だけ滞在できることが判明。
ホームから景色を眺めるには、逆にちょうどよい時間だ。

ホーム前に、景色を眺めるためベンチがある

入江、漁港、森、崖、水平線。できすぎな光景
よかったよかった。僕としてはかなり奇跡的な快晴だ。
絶景を見ながら、ストロング9%サワーレモンをようやく飲み干したところで、上り列車がやってきた。一駅だけ戻り、この日のハイライトともいうべき駅に向かう。
そう、先程飛行機からも見た余部橋梁、そして餘部駅。ようやく、降りることができた。
餘部駅! いや、もちろんこの駅に降りるのは初めてではない。2012年2月以来、7年ぶりだ。
だが、前回は時期が悪かった。真冬の山陰とあって天気が荒れ模様で、駅から集落へ降りていく坂道が完全に凍結していた。僕は、北近畿タンゴ鉄道で日本の鉄道を完乗した友人を祝って城崎温泉に宿泊した帰りで、凍結した急坂を降りられるような靴は履いていなかった。
今なら、保存された旧橋梁「天空の駅」を通って、エレベーターで地上に降りられるが、当時はそんな洒落たものはなかった。橋梁の全景を見ることは叶わず、約2時間、ひたすら餘部駅の待合室で待機することになった。

2012年に閉じ込められた餘部駅。除雪もほとんどされていなかった
今回は、初夏の穏やかな晴天の下、ゆっくりと歩いて観察することができる。それにしても、観光客の多さ、とりわけ外国人の多さに驚かされた。
さて、ここでポケットから、小さな黒人の親子をモチーフとした人形を取り出した。
5月の南アフリカ「INDABA」で購入した、「ウォザ・モヤ・リトルトラベラー」だ。南アのHIV感染患者の自立を支援するウォザ・モヤプロジェクトが販売している商品で、HIV患者が手作りした人形を持って世界を旅してもらい、その写真をFacebookの公式ページにアップしてもらうというもの。作者に代わって人形が世界を旅し、SNSを通じて作者が旅を追体験できるというわけだ。
正直なところ、写真のアップロードはあまり活発とは言えないが、とても良い試みだと想う。
余部橋梁下の道の駅には、なぜか松山せいじさんの「ゆりてつ」?の顔はめパネルがあった。
餘部駅に1時間あまり滞在したあとは、再び下り列車で香住駅へ向かう。ここはノーマークだったのだけど、妻によれば、ホームにカニの爪があるらしい。意味不明だが、降りてみると、
あった。
「きちゃったネ 香美町」という標柱がくやしい。

「わたしたち、南アからきちゃったネ……」
改札口の上にある「カニ迎」のオブジェも、並々ならぬ力の入りようだ。

駅ではさらに観光協会とタイアップして、「かえる駅長を探せ!」キャンペーンを展開中
香住駅名物のカニの爪、以前は駅前にもあって駅名標をバックに写真を撮れらしいが、駅前が現在工事中のため、ホームの1個しかない。これほど力を入れる香美町のカニをぜひ食べてみたいものだが、現在は絶賛禁漁期間中である。
しょうがないので、駅前の食堂で「マグロの唐揚げ定食」を注文してみたのだが、なぜか「マグロフライ」に化けた。
思い通りにいかないのが、また旅の醍醐味である。
お腹いっぱいになったところで、まだ14時前。朝が早かったので一日が長い。が、今日はここから早くも宿に向かう。宿泊地が、今回の目的の一つでもある、らしい。