立山砂防見学会

知人に誘われ、富山県の立山砂防の見学会に参加してきた。

立山砂防は、鉄道ファンにとって憧れの地だ。

軌間610mmのトロッコに乗れるはずだったのだが

連続18段を含む38段ものスイッチバックを擁する、全長18kmの立山砂防軌道が現役で使われているからだ。観光施設ではないため、通常は乗車できないが、立山カルデラ砂防博物館が定期的に開催している見学会に参加すると乗車できる。一般向けの見学会は抽選制で、毎回10倍を越す高い倍率となる。

観光用ではない現役の工事用軌道であることから、乗車のハードルはかなり高い。10倍を超す応募倍率を突破しても、天候の壁がある。前日の時点で、当日の降水確率が50%を超えていると原則として中止。催行率は5〜7割程度で、3回に1回は現地へ着いた時点で中止となってしまう。

今回は、前日の時点で降水確率は10%。翌朝8時半、無事見学会がスタートしたのだが……

「申し訳ありません。先程現地から連絡があり、軌道上に倒木が発生したため本日のトロッコの運行は中止となりました」

乗車5分前。まず博物館の展示物を簡単に説明してもらっていた途中で、運行中止の連絡が来た。倒木による中止は、かなりのレアケースだ。

昭和40年代に廃湯となった立山温泉の跡

見学会本来の目的は、砂防事業の学習であるため、往復バスに切り替えて見学会がスタートした。つづら折りの林道を、2時間近くかけて登り、立山カルデラを見晴らす六九展望台まで来たところで

雨脚が強くなった。

かつて、登山客でにぎわったという立山温泉の跡地に着いた頃には、土砂降り。全身びしょ濡れの状態で避難小屋のような休憩所に入った。

「ただいま博物館と連絡しまして、このような悪天候のため、残念ですがここで見学会を中止することになりました」

結局、往復4時間近く山道を揺られ、予定ポイントの半分ほどを見ただけで引き返すことに。軌道に乗れず、見学地も満足に見られず、車酔いと戦いながら山道を往復するという、実に不運な、でも印象的な砂防見学会だった。