過去3回の南北共同宣言を簡単に比較

朝鮮戦争で破壊された旧労働党舎

この話題ばかりですみません。これまで3回行われた、南北首脳会談での共同宣言の内容について、修飾を省いた骨子をそれぞれ並べてみます。僕の主観で編集されているので、興味のある方はリンク先の原文も読んでください。赤字は、それ以前の宣言に見られなかった内容です。

2000年6月15日「六・一五共同宣言
金大中大統領と金正日委員長による史上初の南北首脳会談

分断後初の首脳会談の意義を増進させ、南北関係を発展させて平和統一を目指す。
1.南と北は、国の統一問題を自主的に解決する。
2.南北それぞれの統一構想に共通性があると認める。
3.8月15日から離散家族の訪問団交換などを実現する。
4.経済協力をはじめ、各分野で協力と交流を進める。
5.速やかに事務レベルの対話を開始する。

金大中大統領は、金正日国防委員長がソウルを訪問するよう招請し、適切な時期にソウルを訪問する。

初の会談ということもあり、南北それぞれの統一構想に「共通性がある」ことの確認と、対話と交流の開始に重きが置かれました。軍事的な対立の解消については、触れられていません。

2007年10月4日「一〇・四南北共同宣言
盧武鉉大統領と金正日委員長による2度目の首脳会談。盧武鉉大統領の退任直前に行われた。

六・一五共同宣言の精神を再確認し、双方が努力すれば、民族繁栄の時代、自主統一の新時代を開けると確信する。六・一五共同宣言に基づいて、次のように宣言する。

1)六・一五共同宣言を履行する。
2)思想と制度の違いを超えて、南北関係を相互尊重と信頼関係に転換させる。
3)軍事的敵対関係を終わらせ、緊張緩和と平和保障のために協力する。
4)現在の休戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築するために、3者または4者首脳の会談実現に努力する。(栗原註:3者とは南北米、4者はこれに中国を加えたもの。朝鮮戦争の当事者)
5)経済協力事業を拡大発展させていく。
6)歴史、言語、教育、科学技術、文化芸術、体育など社会文化分野の交流と協力を発展させる。
7)離散家族の再会事業拡大など人道主義的協力を推進する。
8)国際舞台で同胞の権利と利益のための協力を強化する。
・宣言の履行のために南北首相会談を開催、その第一回会議を今年11月中にソウルで開く。今後は首脳が随時対面し、懸案問題を協議する。

2度目の会談は、この1ヶ月後に盧武鉉大統領が退任し、北朝鮮に対して厳しい態度の李明博政権が発足したため、正直ほとんど印象に残っていません。停滞していた前回の共同宣言履行を確認し、初めて軍事レベルの対立緩和に言及されました。

2018年4月27日「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言
文在寅大統領と金正恩委員長による3度目の会談。初めて板門店の南側で開催された。

両首脳は、長い分断と対決を一日も早く終わらせ、和解と平和繁栄の新時代を開くため次のように宣言した。

1.南北関係の全面的な改善と発展を通じて、共同反映と自主統一を目指す。
・従来の合意を徹底的に履行する。
・各分野の対話と協議を、なるべく早く実施する。
・開城に共同連絡事務所を設置する。
・スポーツなど多方面的な交流を進める。
・離散家族の再会をはじめ人道的な問題を解決していく。
・「一〇・四南北共同宣言」で合意した事業を推進し、鉄道と道路の連結を行う。

2.南北は戦争の危険を解消するために努力する。
・一切の敵対行為を全面的に中止する。
・非武装地帯を実質的な平和地帯とする。
・西海の北方限界線一帯を平和水域とする。
・様々な軍事的な保障対策を立て、軍上層部の会談から行う。

3.朝鮮半島の平和体制構築のために協力する。
・朝鮮戦争の「休戦」状態を終結させ、平和体制を樹立する。
・南北ともいかなる形態の武力も互いに使わない。
段階的な軍縮を実現する。
・朝鮮戦争の終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換する。
・南北米中の4者会談の開催を目指す。
完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現することを目標とする。
南北は、北朝鮮が従来行ってきた行為が朝鮮半島の非核化のために大きな意義を持つという認識を共有する。
朝鮮半島の非核化のため、国際社会の支持協力を得るため努力する。

両首脳は、定期的な会談と直通電話を行い、南北関係の発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた流れをさらに拡大していくよう努力する。

まず、文在寅大統領は、今年の秋に平壌を訪問することにした。

今回の共同宣言です。2017年に北朝鮮が核保有を宣言したうえでの内容であり、「一〇・四共同宣言」を基に、非核化に関する内容を中心に加えた形になっています。より具体的にはなっていますが、基本的な内容や肝心のことは努力目標だったりするなど、従来の宣言を踏襲しています。また、国の総力を挙げて核兵器開発を行ったうえで「非核化」を目標としたり、従来とってきた措置を非核化のために必要な措置だったとするなど、アメリカを強く牽制した内容となっています。

この3つを見て、「少しずつ前進している」と見るか、それとも「板門店宣言は目新しい内容ではない」と見るか。僕は後者の印象を持っていますが……。

この話ばかりですみません。ご興味のある方は、原文も読み比べてみてください。