4月27日、韓国と北朝鮮を分断するDMZ上にある板門店で、史上3回目となる韓国と北朝鮮の首脳会談が行われ、「板門店宣言」が発表された。
朝日新聞/毎日新聞/産経新聞
「歴史的な転換点だ」と好意的に受け取る人が多い印象だが、僕はとても心配だ。
短期的には、朝鮮半島で戦争が起きる危険性は当面低くなった。これは素晴らしいことだ。
だが、宣言をよく読むと、その内容は2000年の「6.15南北共同宣言」(金大中大統領と金正日委員長)、2007年の「10.4宣言」(盧武鉉大統領と金正日委員長)とさほど変わらない。次第に内容が細かくなっているが、今回初めて盛り込まれた内容は、朝鮮半島の非核化を目指すとした部分くらいだ。
そして問題は、これまでの北朝鮮政府の行為を容認する内容が盛り込まれたことだ。
남과 북은 북측이 취하고 있는 주동적인 조치들이 한반도 비핵화를 위해 대단히 의의 있고 중대한 조치라는데 인식을 같이하고 앞으로 각기 자기의 책임과 역할을 다하기로 하였다.
南と北は、北側が講じている主導的な措置が、韓半島非核化のために極めて意味のある、重大な措置であるという認識を共にし、今後各々自らの責任と役割を果たしていくことにした。
「北側が講じている主導的な措置」とは何を指すのだろう。「北側が」と限定していることから、今回の南北対話のことではない。これは、北朝鮮がこれまで行ってきた、核開発から実験中止宣言に至る一連の行為を指しているのではないか。「朝鮮半島全体の非核化を実現するために、まずはアメリカへモノを言えるよう核開発を行った」ということだろうか。
もしそうなら、これを韓国が容認することは賛成できない。冷戦時代の論理そのものだ。
今後、北朝鮮がアメリカに対し朝鮮半島からの軍事力削減・撤退を主張していくことは明らかだ。北朝鮮はアメリカだけが相手だから、「あなたが核を捨てるなら私も捨てます」と言える。しかし、北朝鮮の背後には中国がいるから、アメリカは「あなたが核を捨てるなら私も……」とはなかなか言えない。
そうなると、北朝鮮側は「我々は非核化のために努力しているのに、アメリカが応じない」と国際社会に訴えることができる。韓国の世論が同調し、韓国内で反米意識が高まることも考えられる。
それによって朝鮮半島が北朝鮮主導で統一される……ことはまずないが、北朝鮮政権が「倒れにくくなる」ことは間違いない。国際的な同情を集めて、国連制裁措置の解除や緩和も狙えるかもしれない。北朝鮮は民主化を進めなくても体制を維持できることになり、特に地方の貧しい人々の苦しみは変わらない。日本人や韓国人の拉致被害者問題も、「南北融和に水を差す」として解決が遠のく恐れがある。
それでも、戦争の危険がひとまず遠のいたことは、やっぱり歓迎したい。この際、南北の交流はどんどん進めて、外の世界を知る北朝鮮の人を少しでも増やすべきだ。