由利高原鉄道鮎川駅をおもちゃ駅に!

秋田県の由利高原鉄道が、クラウドファンディングで鮎川駅のリノベーションの支援を求めている

由利高原鉄道のYR-3000形

由利高原鉄道は、国鉄矢島線から転換した鳥海山ろく線(羽後本荘〜矢島間23.0km)を運行する第3セクター鉄道だ。沿線は伝統工芸品の御殿まりや雛人形などで知られるが、人口減少や立地のハンデなどから難しい経営を余儀なくされている。
鮎川駅は、羽後本荘駅から3つめの駅で、1kmほど離れたところに旧鮎川小学校がある。1954年に竣工した木造校舎は、当時の鮎川村が約3000万円を投じて建設したもので、国の登録有形文化財となっている。

この校舎が、今年7月、「鳥海山 木のおもちゃ美術館」として生まれ変わる。東京四谷にある東京おもちゃ美術館監修のもと、地元産の木をふんだんに使った「木育」おもちゃや大型遊具を設置する、多世代交流のミュージアムだ。老朽化した郷土資料館の収蔵物も移転し、おもちゃとともに館内に散りばめて展示。楽しみながら地域の伝統と歴史を学べる施設となる。

四谷にある東京おもちゃ美術館も小学校の校舎を活用している

現在のところ、「鳥海山 木のおもちゃ美術館」のオープンに合わせて、木のおもちゃを多数積み込んだ「おもちゃ列車」がデビューすることが決まっている。それに加えて、最寄りの鮎川駅を全国唯一の「おもちゃ駅」にリニューアルしようというのが、今回のクラウドファンディングだ。

支援は3000円から可能だが、1万円以上支援すると、「一口駅長」としてミニ本荘こけしがもらえる。由利高原鉄道の終点・矢島駅には、支援者の名前がついた「ミニ駅長室」が設置され、実際に矢島駅を訪れてミニ本荘こけしを駅長室に収めることができる。支援のリターンとして、単にグッズを送付するだけでなく、実際に現地を訪れ、鉄道の利用につなげようというアイディアがユニークだ。

美術館を監修する東京おもちゃ美術館の空間デザインは、JR肥薩線活用プロジェクトなどを担当された、砂田光紀さんが担当されている。鳥海山 木のおもちゃ美術館も、砂田さんの担当だ。鉄道ファンにはお馴染みの水戸岡鋭治氏とも親交が深く、デザインにはどこか水戸岡さんと共通のテイストを感じる。

おもちゃ列車に乗っておもちゃ駅に降り、おもちゃ美術館を訪れて地域の伝統文化と歴史を楽しむ。クラウドファンディングが成功すれば、そんな新しい試みが実現する。

クラウドファンディングは、300万円を目標に、4月24日まで実施中だ。

それにしても。

僕の中野の実家の近所には、かつて「おもちゃ美術館」があった。僕が中学生だった頃だ。昔のおもちゃやら、グリコのおまけやらが狭い建物にぎっしり詰まった、不思議な空間だった。

そのおもちゃ美術館が、東京おもちゃ美術館となり、今度は地方鉄道と地域の活性化の原動力になろうとしている。

あの、「よくわからんおもちゃビル」が、30年を経てこんなことになるとは。

なんだか感慨深い。

※初出時、東京おもちゃ美術館のデザイナーについて誤りがありました。訂正するとともに、砂田光紀さんをはじめ関係者の方にお詫びいたします。