五日市から、拝島を経由して高麗川にまわった。
高麗川は、八高線と川越線の分岐点だが、もうひとつ、太平洋セメント埼玉工場への引き込み線があった。
セメントの原料や製品を貨物列車が輸送していたが、1983(昭和58)年から地下ベルトコンベアーが稼働し、1999(平成11)年に廃止された。
昨年、廃線跡が太平洋セメントから日高市に譲渡され、市は4500万円かけ遊歩道「ぽっぽ道」として整備。つい先日、3月8日に開通式が行われた。
現役時代は築堤だったが、平地にならして遊歩道化したそうだ。数カ所に設置された踏切警報機は、今回の整備にあたって設置されたものだが、元は同引き込み線の別の場所にあったものを移設・復元したものだという。
築堤が失われているので、キロポストなどの標識は残っていないが、「線路内歩行禁止」の立て札はあちこちに残されていた。きっと、ジョークの意味合いもあるのだろう。
写真を撮っていたら、足にギプスをはめた男性が話しかけてきた。
「写真を撮りにいらしたんですか。失礼ですが、どちらのカメラを……」
詳しくは聞かなかったが、男性はこの近所に住んでいる方で、事故によって足を複雑骨折したらしい。
「こんな身体になってしまいましたけど、リハビリを兼ねて、歩くようにしています。写真も撮るようになりまして、一眼レフとはいっても、お恥ずかしいようなカメラなんですが……」
遊歩道の延長は572m。往復すればちょうど1キロほどで、起伏も少ない。歩行訓練にはちょうどよい長さなのだそうだ。
「この辺りは学校もありますから、春からは正式に通学路に指定されるようですよ」
すでに、何人もの小中学生たちが「ぽっぽ道」を歩いているのが見えた。
末永く、日高市、そして高麗川の名物となりますように。
↑車道を隔てた先は太平洋セメントの私有地。廃線跡は砂利の空き地に変わる。