麗水駅前ののり巻き屋

 最終日。10時発の特急「セマウル」に乗るので、駅前で朝食をとることにした。

 何もない駅前だが、とりあえず無難そうなのり巻き屋を発見。早速、ドアを開けて中に入った。

 その時、僕の目に入った光景。


「うー、さぶさぶ」

な、なにぃ?


「おっ、お客さんきたー」

 首輪を付けた、微妙に可愛くない若いオスネコがストーブで暖まっていた。ネコが忌み嫌われる韓国では、あり得ないはずの光景だ。

「うちで飼ってるんですよ。もとはノラの子だったんだけど、寒そうだったんで入れてやったの」

 1人で店をやっているらしい姉さんが、愛想のない表情で言った。

「韓国では珍しいって? そうねえ、韓国では嫌われてるからね。でも、あたしはイヌのほうが苦手なのよ。前の職場では、職場でずっと飼っていたわ。アパートだったんで、家じゃ無理だったから」

 姉さんは、ネコの刺繍が付いたエプロンをしていた。本当にネコ好きらしい。


「俺のカニカマ、まだ?」

「可愛いでしょ? 名前は、ナビっていうのよ。韓国のネコは、全部"ナビ"よね(笑)。もうすぐ半年になるわねー」

 姉さんは、喋りながら手慣れた手つきでのり巻きを仕込み始める。業務用の、カニカマボコの封を切った瞬間、ナビが走り込んでくる。

「カニカマが一番のお気に入りなの。海産物は食べないのよ。あと、豚肉も食べないわ。牛は食べるけど。グルメなのよね」

 姉さん、「海産物」は、イカしかやったことがないとみた。まあ、豚の生肉もネコは食べなさそうだなあ。ていうか、ネコは豚の生肉大丈夫なんだっけ。


「~♪」

 韓国にも、人間に飼われている雑種ネコは存在した。しかも、時々入ってくる客はどの人も知り合いなのか、ナビにも慣れっこのようだ。なんだか、急に麗水という町に親しみがわいた朝だった。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメント

  1. ききみみ より:

    出た~![E:happy01]
    温まってるな~…。
    なんか保護マスクつけたレクター博士みたい…。

  2. 栗原景 より:

    レクター博士ときましたか。
    甘ったれなやつでした。ストーブ、近すぎです(笑)。

  3. デンゾー より:

    通りすがりですが、癒されました。
    自分も一時韓国に住んでましたが、猫はカラス以下の存在という認識でしたので、まさかの写真でした。ただ、「イカはだめでしょ!イカは」と言うべきだったかも。
    また来ます。

  4. nami より:

    韓国の記事、おもしろかったです!!
    また楽しみにしています!!

  5. 栗原景 より:

    デンゾーさん
    本当に時代は変わりましたねえ。
    いえいえ、イカの件は僕の妄想です。韓国では、「해물=어징어」だったりするので(^^)。また遊びに来てください。
    namiさん
    またよろしくお願いします(^^)。