川島令三×横見浩彦対談本『すごい列車!』

sugoiresshab

 メディアファクトリーから、トラベルライター横見浩彦氏と、鉄道アナリスト川島令三氏の対談本、『すごい列車!』が発売。写真集『秘境駅』と同じ江守氏の企画で、僕も写真を数点提供している。早速読んでみた。

 鉄道ファンから見ると、横見さんと川島さんというのは、変わった取り合わせだ。横見さんは古い駅舎や車輌、ローカル線を好む「国鉄派」の乗り鉄で、川島さんは都市鉄道や民鉄を中心とした特急列車に造詣の深い評論家。この2人が「日本の魅力ある列車」について語ったところで、話はどこまでも平行線をたどりそうな気がしたのだが……

 やっぱり、ほとんどの話題で意見が合っていなかった。

 たとえば、滝川発釧路行きの、日本最長距離鈍行について。国鉄型のキハ40のボックスシートに収まり、北海道の車窓風景を楽しむ8時間の汽車旅だ。富良野や帯広では長時間停車するので、駅弁を購入したり、駅前の散策も楽しめる。僕から見ると、何とも魅力的な列車だ。

 横見さんも、基本的には僕と同じで、その魅力を川島さんに力説する。

「たくさんあった長距離鈍行の名残として、話題になりますよ!」
「車内でのんびり過ごすのが憧れなんです」
「乗っているうちに、我が家のような愛着が湧いてくるんです」

 横見さん、仰る通りなんだけどね……。横見さんはパッションで力説するため、その思いは川島さんには全然伝わらない。まるで、長嶋茂雄の解説を聞いているようだ。

「8時間あったら、函館から東京まで行けますよ」
「時間のムダって感じも……」
「ディーゼルカーじゃうるさいしね」

 いやいや、川島さん、そうじゃないですよ! ディーゼルカーのあの音が良いんじゃないですか!

 気がついたら、僕も川島さんに突っ込みを入れていた。逆に、川島さんが得意な通勤電車や民鉄の話になると、横見さんに突っ込みを入れたくなる。横見さん、「江○○百貨店」っていつの時代の話ですか!

 そんなノリが、約190ページ、68テーマに渡って続く。ひたすら情念で語る横見浩彦、データと理論で冷静に語る川島令三。まあ、同じ鉄道ファンでもこれほど違うものかと楽しめること間違いなしだ。

 ひとつだけ惜しかった点を言うなら、それぞれの列車がどこを走っているか、一目で分かるマップはほしかったなあ。鉄道ファンなら、「○○線(○○~○○)」ですぐわかるけど、詳しくない人にはなかなかピンと来ないとかもしれない。おそらく、"濃ゆーい"本文をギリギリまで多くとった結果だろう。

 945円という定価を考えると、実にお得な良い本だ。書店で見かけたら、写真集「秘境駅」を購入するついでに、手に取ってみてください。