あれ以来初めての秋葉原

 打ち合わせの合間を縫って、秋葉原に来た。
 画像バックアップ用のハードディスクを購入するためだ。

 あの事件以来、秋葉に来るのは初めて。何よりもまず、献花台によって手を合わせてきた。僕の他にも、通行人が次々手を合わせており、小柄なおばさんが花を整理していた。

 なんとも、言いようのない事件だった。

 犯人には強い憤りを覚えるが、彼の心の闇に思いを巡らすと、暗澹とした気分になる。僕だって、もういくつかの不運と挫折を経験していたら、彼のような絶望感を感じていたかもしれない、と思うからだ。単純に、恐ろしい殺人者で済ませる気にならない。

 だからといって、あの事件に同情やら共感やらを覚えるわけではない。ただ、彼にほんの少しの巡り合わせと楽観的な思考があれば、あの事件は回避できたのではないか、と思う。

 アキバ系がどうの、ゲーム脳がどうの、格差社会がどうの、といった単純な話ではないはずだ。

 さて、とうとう僕が買うハードディスクもテラバイトの領域に突入した。事務所のPCにつながるハードディスクは、これで7台目。合計で、2テラバイトにもなる。どこまで行くんだろうなあ。