南大門全焼

 言葉を失った。

 10日20時50分ごろ、ソウル市内にある、韓国の国宝第1号「崇礼門」(通称南大門)から出火。消防車39台と消防士88人が消火にあたったが、深夜になって火勢が拡大。11日未明3時までに木造二階建ての建築部分が全焼・倒壊して鎮火した。

 火災は、当初目撃情報から放火の疑いが濃いとされたが、11日9時現在では、防犯カメラに人影が確認されず、断定できないという。

 ここ数年、門の周囲が公園になり、昼間は門の下に入れるようになり……と、だんだん市民に開放されてきた南大門。監視カメラと無人警備システムが設置されているだけで、防災設備は皆無だったらしい。公園が公開された頃、門脇の芝生に入ろうとして注意されている観光客を見たことがあり、これほど無防備とは思わなかった。

 もともと火の気配があるはずもない場所だが、仮に火でないとすれば、考えられるのはライトアップ設備の漏電だろうか。

 壬辰倭乱でも、朝鮮戦争でも被災を免れた朝鮮王朝最古の木造建築である。日本で言えば、清水寺か奈良の大仏が焼失したようなものだ。

 ソウルの顔とも言える国宝、それも「第1号」が、これほど簡単に焼失してしまうとは信じられない。出火直後に通報があったにもかかわらず、初期消火に失敗した。朝鮮日報によれば、22時半頃、いったん鎮火したとして残り火の消火にあたったが、扁額の内部で再び出火し全体に燃え広がったという。スプリンクラーがなく、内部が防水構造になっていたため、放水も届かなかった。

「消火活動は困難を極め」たらしいが、万一の際の消火態勢が、全く準備されていなかったたことに腹立たしさを感じる。韓国の、こうした安全不感症・態勢不備は本当に残念でならない。

 事故によって、リスクコントロールは発達するというが、南大門がその犠牲になるとは思わなかった。

お詫びと訂正:初出時、無人警備システムの企業名を記載しましたが、その企業は昨年10月に契約を終了し、現在は別の会社のシステムを使用していたとのご指摘をいただきました。お詫びして訂正いたします。

南大門
正式名を「崇礼門(スンネムン)」という。首都漢城(ハンソン:ソウルのこと)の正門として、朝鮮王朝初期の1398年に完成した。国宝第1号に指定されており、今回焼失したのは、1447年に改築されたもの。現存する朝鮮王朝最古の建築物だった。