そのホテルの売りは

 伊那で見かけた、ビジネスホテル。

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 普通の、8階建てビジネスホテルだ。

 伊那市民の、うめぼしこんぶが指をさす。

「あの垂れ幕、見てくださいよ」

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「最新安全・最強耐震ホテル誕生」。

 1年ほど前、世間を騒がせた耐震構造偽装事件。あの事件の影響で、今や耐震構造がホテルのひとつの売りになっているのである。

 ……いやいや、そうではない。

 このホテル、実は姉歯建築設計事務所が設計に関わり、構造計算書が改ざんされていたホテルだ。

 そのため、"安全が確認されるまで"営業休止を余儀なくされ、結局約1年にわたって閉鎖されていた。営業を再開したのは、つい最近、去年の12月のことらしい。

 耐震構造の改修工事は、総工費2億円。1階に耐震壁と独立柱を設置し、上層階も外壁や窓周辺の壁を厚くするなどして、国の基準をクリアしたそうだ。

 悪いイメージを払拭したい気分はわかる。実際、このホテルは元々人気が高く、営業再開後すぐに多くの予約が入ったそうだ。朝食付き5980円という料金も、施設の充実度に比べて割安だ。

 でもまあ、あの垂れ幕にどれほどの効果があったのかは疑問。