竹島/独島問題のはなし

 昨日の続きを書いてみたけれど、やっぱり彼女の発言をかなり晒してしまうことになるので、破棄。レンガ造りのおしゃれな店で、竹島/独島問題の日本の立場を説明するのも、韓国ならではの体験だったと思いたい。
 ひとつだけ書いておこうかな。こんなやりとり。
「うーん、日本も根拠がなくて主張しているわけじゃないよ。だから、日本は国連の国際司法裁判所に判断を任せることを主張してる。世界に、公平に判断してもらおうと言ってるんだ」
「でも、日本は大国だから、国連で争いになったら、当然日本が勝つんじゃないですか」
「いや、アメリカならともかく、日本は国連でそんな力はないよ」
「そうでしょうか? それに、たとえばカゲリさんが住んでいるところに後から外国の人が来て、ここは自分たちのものだから裁判しようといったら、誰でも気分が悪いんじゃないですか?」
「いや、その例えは……えー……」
 言葉につまってしまった。 ”竹島/独島が元は韓国のものだったという点に争いがなければ成り立つ話だが、まさに日韓はそこを争っているのだから、比喩として不適切だ”と言いたかったのだが、韓国語が浮かばなかった。このあたり、韓国の人と竹島/独島問題について話すとき、いつも苦労するところだ。「独島は元々韓国の領土で、近代になって日本が帝国主義的野心から領土権を主張し出した」という自国の見解を突き放して検討できる人は少ない。以前はよく、「日韓のためにも、あんな島なければ良いのにって思うんだけどねー」と言っていたが、逆に「韓国の領土なのに、なければいいなんて、ひどいんじゃないですか」と怒らせてしまうことがあったので、最近は自制している。
 まともに日本の立場を説明しようとすれば、三国史記や高麗史地理志、大東輿地図といった文献に言及しなくてはならず、そこまでやると完全な討論になってしまう。これまで多くの人から竹島に対する認識を訊かれたが、ほとんどの人は、好奇心から日本人の考え方を知りたいだけなのだ。だが、ご飯を食べながら軽く話すというレベルでは、日本には日本の主張がある、ということをわかってもらうのは難しい。韓国で暮らしていて、せつなくなる一瞬だ。