8月に、ソウルに新規オープンした日系ビジネスホテルに宿泊。相変わらず、「日本そのまま」 のサービスだ。
午前中は、ロビーを借りて仕事を進めることにした。要領が悪く、充分な時間があったはずなのに、持ち出しになってしまった。
ロビーにやってくると、先にテーブルに座っていたおじさんに、見覚えがある気がした。歳は60くらい。日本人だ。俳優かなにかだったかな。時代劇の悪役とかにいそうな感じだ。うーん、思い出せない。まあいいや。
しばらく、ノートPCを開いて仕事をしていたると、突然背後で日本人の声が聞こえた。
「なんだこれは、ダメじゃないか」
「早く掃除しろ、なんで音楽流さないんだよ」
どうやら、ロビーのサービスにクレームをつけているらしい。
振り返ると、先ほどのおじさんだった。
8月にオープンしたばかりということで、確かに従業員の動きは少々ぎこちなかったが、ロビーのあり方にまで口を出すことはないだろう。困ったお客さんだな、と思ったそのとき。
ひらめいた。
このホテルの創業者で前社長の、あの人じゃないか。
違法改造をして、「制限速度60kmの所を65kmで走ったようなもの」と開き直ったり、一転して涙の謝罪会見をしたり、石膏ボードを地下に不法投棄して硫化水素を発生させたりした、あのオーナーだ。
なるほどなあ。
もうちょっと、言葉遣いが変われば、現場をしっかり見るいい(元)経営者ってことになると思うんだけどな。
お客さんもいるんだし、もう少し考えてほしいな、と。