GPS情報とともに動画を撮影できる「CALINT」

13日発売の鉄道ダイヤ情報2019年8月号に、iPhoneアプリ「CALINT」の紹介記事を書いた。

ドローン関係のアプリを開発している株式会社moegiがリリースした動画撮影アプリで、iPhoneのセンサーを使って、現在位置や速度、高度、方位、重力加速度などを画面の中に映した状態で録画できる。今映っている景色が、いつ、どこで、どんな速さで、どの方角に向かっているかがひと目でわかる。鉄道の前面展望など、車窓風景の記録に最適だ。

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解像度はスマホ画面の解像度に依存する。フレームレートは60fps

上のYoutube動画は、ダイヤ情報の取材時に京浜急行快特の先頭で撮影したもの。動画編集アプリLumaFusinで編集してあるが、こんな動画を撮影できる。車窓風景を撮影しながら、現在位置や速度をほぼ正確に動画上へ記録できるというのは、これまでありそうでなかったコンセプトだ。京浜急行品川〜横浜間では、時速120kmギリギリで疾走やJRとの競争もデータ付きで記録でき、実に楽しかった。時速300km近くで走る新幹線や、路地裏を走るコミュニティバスなど、いろいろな交通機関の動画を集めたくなる。電波は発信しないので、飛行中の旅客機でも使用可能だ。

CALINTの魅力は、その手軽さだ。特に設定は必要ない。起動して、録画ボタンを押せばすぐに撮影がスタートする(最初のみカメラへのアクセス許可と、音声も収録するかの選択が必要)。現在位置は左下に表示されるが、地図の大きさは3種類から選択でき、非表示にもできる。

測定される位置・速度情報もかなり正確だ。多少の誤差が出ることもあるが、すぐに修正される。各データは特に設定しなくてもGPSログとして記録されており、GPSデータの標準規格であるGPXファイルと、アプリの独自フォーマットによるCSVファイルが生成されてiCloud Driveに保存される。GPXファイルをGoogleマップやGoogle Earthにインポートすれば、地図上に移動記録を表示できる。

GPS情報を動画に連動させるのは、従来PC上での煩雑な編集作業が必要だった。誰でも気軽に、データ満載の車窓動画を撮影できるようになったのは面白い。僕がやっている新幹線の車窓研究にも、大いに役に立つ。

もっとも、CALINTはまだまだリリースされたばかりで、moegiも新興のデベロッパーだ。大きなポテンシャルを秘めているが、まだまだ荒削りで、改善してほしいところもたくさんある。

第一に、露出補正や手ぶれ補正が効かないこと。このアプリはカメラの撮影機能は使っておらず、画面をそのまま録画する画面収録アプリだ。このため、露出補正や手ぶれ補正といったカメラ側の機能は使えない。画面をそのまま録画するので、録画ボタンや後述する広告もそのまま動画に記録される。また、1秒間に60回ずつスクリーンショットを撮るようなものなので、メモリとバッテリーを大量に消費する。メモリに余裕がないと落ちることもある。このため、連続して10分が経過すると、別ファイルに切り替わる(撮影は止まらない)。このあたりは、今後の改善に期待したい。

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右下の広告がそのまま動画に収録される

もう一つは、サブスクリプション・システム(課金制)が洗練されていないことだ。CALINTは基本的に無料アプリで、画面上に広告が表示される。この広告が問題だ。撮影画面の右下に表示され、録画した動画にもそのまま収録されるのだが、美少女が登場するゲームが多く、せっかく録画しても公開に躊躇することがある。録画終了時に、定期的に広告が表示されたほうが良いのではないか。
広告を消すには、月額150円のサブスクリプション登録が必要だが、毎日使うアプリではないので心理的負担が大きい。せめて1カ月程度の無料お試し期間を設けてほしい。また、有料登録しても画面左上の「CALINT」ロゴが表示されたままとなるのも気になる。ただでさえ各種データで動画のスペースが狭くなるので、有料登録した場合はロゴを非表示にするべきだと思う。

欠点はあるものの、データ満載の動画を手軽に記録できる魅力は非常に大きい。今後の成長に注目したいアプリだ。

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