西武安比奈線跡を歩く

数十年ぶりに、西武安比奈線の様子を見て来た。

昔、起点である南大塚駅の近くに親戚が住んでいた時期があり、安比奈線の「廃線跡」、特に国道16号線との交差部周辺は身近な存在だった。そのせいか、今でも僕はこの路線を「あいなせん」と発音してしまう。地名は「あいな」だが、線名は正しくは「あひな」らしい。


国道16号を渡る安比奈線跡

安比奈線は、入間川で採取された砂利の運搬を目的とした貨物線だったが、昭和38年頃から以来50年以上「休止」の状態が続いていた。車両基地の建設や旅客線化構想もあったが、結局実現することなく、昨年西武鉄道が廃止を決めたと報じられた。

昨年11月に廃止になったという未確認情報もあり、線路が早々に撤去されてしてしまうのではないかと心配だったが、ほぼ全線、昔のままの姿を残していた。ただ、立入禁止の立札と柵が設置され、線路を歩くことはできない。線路沿いの道路を歩いていくことにする。もっとも、線路に沿った道路が少ないので、かなりジグザグに歩かなくてはならない。
※「昨年11月末での廃止」は誤りでまだ廃止されていないのではないかという指摘がありましたので修正しました。

この辺りは川越市内。どこからともなく、醤油を焼く香ばしい匂いが漂って来た。そういえば、焼き団子は川越名物。見回すと、匂いの源は駄菓子屋にしか見えない小さな店だった。覗くと、よっちゃんイカなどが並んだ台に「だんご60円」の貼り紙。団子屋兼駄菓子屋を営んで40年以上になるそうだ。

踏切跡横の木陰で団子と柏餅を頬張り、先へ進む。住宅街を抜けると、線路は小さな森に吸い込まれていた。宅地化によって縮小を続け、最後に残った森かもしれない。敷地内は立ち入り禁止だが、草に埋もれたレールの上ではスズメたちが遊んでいた。

森を抜けると、線路は入間川河川敷へ。この辺りは、10年ほど前に仮の遊歩道として整備され、イベントで使われた区間だ。今は柵が設置され、歩くことはできない。

線路跡は入間川を渡る八瀬大橋に分断されるが、河川敷に出ると初めて線路跡を歩けるようになる。線路の下を樹木が根を張り、レールが浮き上がっていた。自然の力は凄い。

この辺りはオフロードバイクや4WDのコースとなっており、なかなか賑わっている。藪を覗き込んでいるのは、安比奈線散策の人たちだろう。

安比奈駅跡に来るのは初めてだったが、線路や架線柱などが数多く残り、想像以上に鉄道時代の面影を残していた。南大塚駅から3キロほど。河川敷の土埃が少々大変だが、散策コースとしてちょうどよい距離だ。

八瀬大橋南の交差点に戻り、武蔵野うどんの店へ。200円を追加するとうどん、ご飯、天ぷらが食べ放題になるというのがユニークだ。缶ビールが喉にしみた。