16年前の盗難

プーケットの海

旅行業界誌の取材でタイのプーケットとバンコクを訪れてきた。タイを訪れたのは、16年ぶりだ。前回訪れたのは、2000年1月。まだ出版社の会社員だった頃だ。タイはそれまでにも何度か訪れたことがあり、今よりも英語が話せたので、気軽な個人旅行だった。

しかし、その時の写真は1枚も残っていない。出発の直前に初めて購入したデジタルカメラを、バンコク到着早々盗まれてしまったからだ。深夜にドンムアン空港に到着し、フードコートの隅で一泊。翌朝、バンコク市内に移動した直後、バスの中でうとうとしているうちに手首からデジカメが消えていた。

画像はイメージ

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盗難証明書を発行してもらうためツーリストポリスに向かうと、そこには大勢の外国人旅行者が集まっていた。1人の警察官に何組もの旅行者がついている状況だった。

僕のテーブルで一緒になったのは、東京から来たという男子大学生2人。当時多かった、「猿岩石に憧れて、男2人でアジアバックパック旅行」という人たちだ。

彼らは2日ほど前にバンコクに到着したところ、食堂だかカフェだかで、「日本に興味がある」という学生風の女の子たちに声をかけられたそうだ。片言の日本語を話す彼女たちと日本の話題で盛り上がり、「友人」も何人か合流して、カラオケへ。そこで始まったのが、「ヤクルトの一気飲み大会」だった。最初の1~2本は普通のヤクルトだったが、数本目におかしな味がした。しかし、場をしらけさせては申し訳ないと考え、そのまま飲み干した……。

目を覚ますと、二人ともどこかの安宿の部屋にいた。もちろん、荷物もお金も、パスポートもない。その時ようやく、睡眠薬強盗にやられたと気付いた。

二人は、英語が全く話せず、ツーリストポリスでは僕がつたない英語で通訳をした。

「僕たち、バックパック旅行は2回目で、すっかり旅慣れたつもりでいました」

馬鹿だなあと思ったが、よく考えれば僕も居眠りしてカメラを盗まれた同類であった。

さて、バスの乗車区間や車体の色、周囲の様子など詳しく聞かれた末に盗難証明書が発行され、帰国後、クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険に申請。デジカメは購入から1週間足らずだったため購入金額の全額が補償された。お気に入りの機種だったので、同じ機種をヨドバシカメラに買いに行ったところ、1万円値下がりしていた。旅の思い出は、1万円の値打ちだったと思うことにした。

SANYO DIGITAL CAMERA

同じ機種を買ったので、外箱が2つになった

旅先で盗難被害に遭うのは初めてのことで、やはり海外は注意が必要だと肝に銘じた。わずか半年後には、韓国出張から帰国した中央線快速電車の中で、取材写真がそっくり入ったカメラバッグを置き引きされることになるのだが……。

SANYO DIGITAL CAMERA

その後2004年まで愛用したサンヨー動画直目DSC-SX150