阿形昭著「歴史に残す静岡鉄道駿遠線」

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阿形昭さんの新刊、「歴史に残す静岡鉄道駿遠線―日本一の軽便鉄道」を書泉グランデで購入した。

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阿形昭さん

静岡県御前崎市在住の阿形さんは、「日本一の軽便鉄道」静岡鉄道駿遠線の研究家として知られる方だ。

静岡鉄道駿遠線は、かつて藤枝市内の大手駅から、東海道本線の藤枝駅に接続する新藤枝駅を経て袋井駅までを結んでいた軽便鉄道だ。路線延長は約65㎞にも達し、軌間762mmのナロー鉄道としては全国最大級の規模を誇っていた。昭和30年代から撤去が始まり、1970(昭和45)年7月末限りで全線廃止。廃線跡は、多くの区間がサイクリングロードとして残っている。

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沿線唯一のトンネルもサイクリングロードとして残る

駿遠線が通っていた御前崎市で生まれ育った阿形さんは、駿遠線に関する著書を何冊も刊行している。今回の「歴史に残す静岡鉄道駿遠線」(静岡新聞社)は、3冊目だ。

1冊目の「軽便の思い出」が地元の人々の思い出話集、2冊目の「写真でつづる静岡鉄道駿遠線」が文字通り写真集だったのに対し、今回の「歴史に残す〜」は、研究の集大成とも言うべき資料集だ。現役時代のカラー写真、用具や切符、廃線跡の現状といった写真資料をはじめ、現存する石碑の碑文、現役当時の社内報、車掌の証言、大正時代からの歴代時刻表、廃止のお知らせ、車両設計図、果ては職員の勤務表まで載っている。付録は列車運行図表と、昭和43年に録音された列車走行音のCD。ナローとして日本一の路線長を誇った駿遠線の資料が全て詰まっていると言っても良い。

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取材では折りたたみ自転車まで貸してくださった

阿形さんは、一昨年9月、鉄道ジャーナル「失われた鉄路の記憶」の取材で大変お世話になった。とても気さくで、そして熱心な方で、大変有意義な取材となった。紀行文としてまとめたいというこちらの気持ちをよく理解してくださり、単純に全線を案内するのではなく、要所要所を案内した後は自転車で自由に回らせてくれたのはとても有り難かった。

3月に発売された書籍で4600円(税別)と高価だが、刊行と同時に大変な人気となり、Amazon、書泉オンラインともすでに新品の在庫がない。書泉グランデに在庫があるのを見つけ、確保した。その値段に一瞬躊躇したが、開いてみれば4600円ではむしろ安すぎるくらいの内容だ。

鉄道の歴史や、近代産業史に関心のある人は、ぜひ入手してほしい一級の資料である。書泉グランデ静岡新聞社には在庫があるみたい。

もう一度、65kmの全線を歩いてみたくなったな。