越川温泉で22年ぶりの懸案を果たす

15日から続いていた出張も終わり、19日は1日フリー。

レンタカーで、斜里の先にある越川へ向かった。

越川は、国鉄根北線の終着駅があった場所。越川集落には今も数軒の民家があるが、越川駅はさらに3kmほど奥へ入った場所にあり、現在はほぼ無人地帯である。根室と北見を結ぶ根北峠を越えるということで根北線と名付けられた路線だったが、昭和30年代からすでに浮き世離れしたローカル線となり、開業からわずか13年で、1970(昭和45)年に廃止されてしまった。

国道244号線で峠に向かって少し進むと、有名な越川橋梁(第一幾品川橋梁)がある。戦前に建設されたコンクリート橋だが、根北線は越川止まりとなり、一度も列車が走ることはなかった。それでも、国道をまたぐ部分が撤去されただけで遺構は残され、現在は国の登録有形文化財となっている。

第一幾品川橋梁。昭和48年に国道部分が撤去されるまでは、10連アーチ、全長144m、高さ10mの美しい姿を留めていた

第一幾品川橋梁。昭和48年に国道部分が撤去されるまでは、10連アーチ、全長144m、高さ10mの美しい姿を留めていた

越川橋梁を見に来るのは、2回目だ。22年前の1992(平成4)年、釧網本線の車内で知り合ったおじさんとレンタカーで知床をまわった帰りに立ち寄った。

その時、橋のすぐ近くからドラム缶を置いた砂利道が延びていた。地図には「越川温泉」とあり、温泉があるらしい。こんな原生林の中に、どんな温泉があるのか……。

当時はインターネットが普及する前で、ぱっと調べるというわけにはいかなかった。路地の入り口にドラム缶があったことから、原生林の中にぽつんとドラム缶の湯船が置かれた浴場を想像し、ぜひとも入浴してみたいと思ったものだ。

2014-07-19 10.36.40

しかし、その日はレンタカーの返却時間が迫っていた。泣く泣くその場を後にし、いつか訪れてみたいと思ったまま20年以上が過ぎてしまった。

今では、インターネットで越川温泉を検索すれば、訪問記が山ほどヒットする。ドラム缶の湯船といった野趣あふれる外湯ではなく、地元の組合によって整備された、そこそこちゃんとした外湯であることもわかってしまった。どうも、ネットと旅は相性が良くない。

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それでも、一度は訪れてみたいと思っていたのだ。40歳を過ぎて、ようやく思いを果たすことができた。ドラム缶ではないが、とても趣のある外湯であることは変わりない。外から丸見えの小さな湯船に浸かり、ほのかに硫黄のような香りがするお湯をたっぷりといただくことができた。

そのまま標津へ抜けて、開陽台展望台にでも行こうかと思ったが、雲行きが怪しいので釧網本線に転進。

知床斜里の隣にある止別駅に車を停めさせてもらい、止別、藻琴、北浜、浜小清水、原生花園の各駅へ。その話は、また一個人にでも書くことにしよう。