秘境駅・両元臨時乗降場

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渓谷沿いに延びる線路脇に、ちょこんとたたずむ駅名標。よく目をこらさないと、そこにホームがあることもわからない。

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駅名標の後ろに見えるのは待合室

韓国鉄道公社嶺東線、両元(ヤンウォン)臨時乗降場。

時刻表にはおろか、地図にも載っていない、幻の駅だ。周囲には数軒の農家と、廃校跡があるだけ。ホームから直接線路を渡ったところにある砂利道が、外界に通じる唯一の道だ。

ここは、韓国を代表する「秘境駅」だ。ついに、やってきた。

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誰が利用するのか……

この駅が開業したのは、1988年のこと。公共交通が全くないにも関わらず、この地域の数少ない住民は高齢者が多い。そこで、住民が当時の鉄道庁に嘆願し、朝夕上下各1本の列車が停車する、臨時乗降場が設けられた。ホームや待合室は、地元の人々が自ら作ったものだという。

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駅の推定場所。ご覧の通り、GoogleMap Koreaにも駅が記載されていない。

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線路際の畑にぽつんと建つ待合室。手書きのハングルで、「両元駅待合室」と書かれている

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待合室の内部。ヤブ蚊などの虫は多いが、よく掃除されており、きれいだ。

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列車は、上下各2本ずつ。きれいな額に納められている。僕は、榮州(ヨンジュ)駅から朝6時の下り列車で7時16分に到着。1時間17分滞在し、8時34分の列車で再び榮州に戻った。

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駅前通り。農家のトラックが一台止まっていた。

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対岸に渡った丘の上に、これも住民が自ら作った小さな公園があり、両元駅を見晴らすことができる。どこか、飯田線の金野駅を思わせるたたずまいだ。

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僕以外にも、利用者がいた。左の二人は、僕と同じ列車から降りて、同じ列車に乗った夫婦。駅近くの知り合いを訪ねてきたそうだ。滞在時間、わずか1時間。右のおじさんは、地元の人らしい。

小さな駅での、わずかな滞在だったが、そこでもちょっとした出合いがあった。その話は、いずれどこかの雑誌に書くことにしよう。

コメント

  1. ききみみ より:

    「鉄道」のことはわかりませんが、なんだかすごいものを見たような気がしました。行楽や旅行のためではなくこの地域のお年寄りたちの文字通り「足」となって生活に密着した存在なんでしょうね。なんだか胸をうたれました。

  2. nami より:

    いずれどこかの雑誌なんて言わないで、
    早く書いてくださいよー!
    鉄道系の雑誌なんて分からない~!
    観光地ではない韓国の様子を教えてくれる
    かげりさんの文章。
    胸がいっぱいになります!

  3. かんりにん より:

    日本だけでなく、鉄道のプライオリティが低い韓国にも、こんな駅があるんだと知って、とても刺激的な誕生日でした。
    GoogleMapを見ていただければわかるとおり、この辺りはものすごいところで、鉄道に平行する道路がありません(笑)。列車の本数が少なすぎるので、次回、もっと腰を落ち着けて探訪してこようと思います。
    namiさん
    すみません! いずれ、ブログにもぼちぼち書いていきます。
    でも、ご安心を。韓国の鉄道ネタは、基本的には韓国の情報誌に書きます。鉄道趣味誌は、海外ネタはあまり扱わないので……。
    出し惜しみしているみたいですみません(^^)。

  4. 猫池 より:

    短い大韓散歩から戻ってきました。
    う〜〜ん……。
    やはり注目してましたか、両元駅(笑)。
    じつは、昨年の10月だったかに江陵を早朝に出る東大邱ゆきムグンファに乗ったときに、この駅で客扱いがあったんですよ。韓国の駅事情からするととてつもなくステキなロケーションで、ほとんどメモをとらない習慣にも関わらず、「両元 小さな待合室があるだけの小駅 民家数軒」とだけ携帯電話にインプットしてあります。ところが、時刻表や地図をみても正体が判然とせず、これでやっとこさ溜飲が下がったというものです。
    こんどはぜひ自分も下車してみたいですね。

  5. かんりにん より:

    非常に亀レス申し訳ありません。
    嶺東線のこのあたりは、線路に並行する道路がなく、かなりの秘境を行きます。昼間乗るのは初めてだったんですが、一気にイチオシの路線になりました。
    他にも秘境駅級の駅があるので、探してみてください。