千駄木「せとうち」での再会

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 千駄木の居酒屋「せとうち」へ。

 「せとうち」は、祐天寺の「ナイアガラ」と並ぶ、鉄道系飲食店のはしり的存在の店。店頭や店内には、サボ、駅名標、時刻表といった鉄道グッズがところ狭しと並び、座席は新幹線のシートを使っている。元々は、大変な鉄道好きで知られた先代のご主人が始めた店だったが、ご主人が亡くなられた後も、奥さんが遺志を引き継いで営業している。

 ずらりと並んだ鉄道グッズはかなりマニアックだが、出てくる料理は大変上品で、居心地がよい。数ある鉄道居酒屋の中でも、別格の存在だ。

 僕が「せとうち」に来るのは2度目だが、今日はちょっと特別だ。

 小学生の頃お世話になった鉄道愛好サークル、「レールウェイクラブ」の方々と、二十数年ぶりに再会するのだ。

 上越新幹線の開業を翌日に控えた、1982(昭和57)年11月14日。この日限りで全廃となる、房総半島の急行列車に、1日ですべて乗ろうという企画が実施された。企画を考えたのは、当時千葉県習志野市在住だったSさん。1980(昭和55)年に、国鉄が「いい旅チャレンジ20,000km」キャンペーンを始めた際、75日間で国鉄全線242線区を完乗し、ニュースにも出た人だ。

 房総急行お別れ乗車の企画は、新聞を通じて参加者が募集された。僕も、たしか毎日新聞を見て連絡したのだと思う。僕のような小学生から、年配の方まで、様々な人が参加した。

 このときの参加者が集まってできたサークルが、「レールウェイクラブ」である。毎月1回、津田沼の公民館などで情報交換の例会を行い、時々、実際に列車に乗りに出かけた。会員に、国鉄職員の方がいたこともあり、雑誌などでは得られない貴重な情報や、普通ではできない体験もできた。

 国鉄白糠線の最終日に乗りに行けたのも、まだ貫通前だった青函トンネルの竜飛定点(現竜飛海底駅)を見学させてもらえたのも、このサークルのおかげだった。一部の国鉄職員の規律の乱れも、この目で見た。

 だが、高校受験が近づくにつれて、僕はいつの間にかレールウェイクラブの活動から離れてしまった。

 それが、20年以上たった今になって、再びお会いすることになったのは、ネットのおかげだ。当時特にお世話になったKさんが、日経Wagamagaの記事を見て僕に気づき、メールで連絡をくれたのである。Kさんは先日の「新幹線の車窓ナイト」にも来てくださり、改めて、連絡のつく人と一緒にゆっくり飲もうということになったのである。

 連絡がついたのは、4人。約束の時間きっかりに「せとうち」に到着すると、もう4人とも集まっていた。

 四半世紀もの時間が過ぎているだけに、僕を含めて、やはりそれだけの時は流れていた。でも、喋ってみれば、小学生の時お世話になったあの頃の人たちだ。

「栗原さんは、今は……」   
「”さん”づけじゃなくて、昔のように”栗原クン”でお願いします(笑)」   
「いやあ、37歳の人にクンというのはなあ(笑)」

 レールウェイクラブで、他ではできない社会勉強をしてから、27年。いろいろあって、今は鉄道旅行をテーマのひとつとするフォトライターをやっている。そのことを、とても喜んでもらえたのが嬉しかった。まだまだ、一人前とはとても言い難いが、今の自分があるのは、こうした人々のおかげだ。

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 ますます、頑張ろうと思った夜だった。

コメント

  1. jun-1 より:

    良いですね~そういう再会って
    小さい頃からアクティブだったんですね。僕の小学校の鉄道クラブの思いでと言えば、沿線の小田急のトランプラリーに友達と参加したことだけですね~
    ちなみに国鉄の記憶がありませんw

  2. かんりにん より:

    小さい頃のほうが、むしろアクティブだったような気もするなあ。
    僕の初めての一人旅は、9歳の時の山手線一周なんだけど、今考えると超無謀だったような気がしますね(笑)。

  3. おけいはん より:

    はじめまして。
    さいたま市の稲村と申します。
    現在、千葉県の君津市生涯学習センターという所でさざなみ模型倶楽部というささやかなサークルを仲間と共に運営しております。
    昨日、たまたま千葉県君津市内某所に保管されているEF15の前頭部を拝見させていただく機会があり、いろいろと調べておりました。EF15163で検索したところ『居酒屋せとうち』にヒットし、こちらまでお邪魔しました。

  4. かんりにん より:

    おけいはんさん
    すみません、すっかり見落としておりました。
    ご訪問ありがとうございます。
    生涯学習センターでの鉄道模型サークルとは、素晴らしいですね。
    どこかでレイアウトを展示する機会などありましたら、ぜひお知らせください。
    今後ともよろしくお願い致します。