韓流ブーム終焉の理由?

 J-CASTは、朝日新聞社の週刊誌AERAの元編集長らが中心になって設立された、ニュース配信サイトだ。ネット上の話題を中心に扱い、特にブログの炎上に関する報道が得意なことで知られる。

 そんなJ-CASTに、『「韓流」ブーム終わった 映画観客、旅行者がた落ち』という記事が載った。

 2006年に公開された韓国映画・DVDはすべて商業的に失敗だった。NHK-BS2の韓国ドラマ枠も今期限りでなくなる、韓国への旅行者も減り、韓流ブームはヨン様を除いて終わった、という内容だ。

 韓流ブームが終わったなんて、今さら何を言っているのだろうという気もするが、よく読むとこの記事、論理が不自然だ。

 まず首をひねるのは、韓国を訪れる日本人が減少し、日本を訪れる韓国人が数字の上で上回ったことを「韓流ブームの終わりを示すもの」としている点。

 たしかに、2006年に韓国を訪れた日本人の数は減った。2006年の実績は約232万人で、2005年の244万人に比べ11万人減少した。しかし、232万人という数字は、ワールドカップが開催された2002年の実績とほぼ同じで、「がた落ち」というにはほど遠い。昨年の第一四半期に、竹島問題等によって訪韓旅行者が大きく落ち込んだことを考えれば、意外なほど健闘したとも言える。

 韓国人旅行者に数字を逆転されたのは、単に日本を訪れる韓国人が激増したからだ。韓流ブームの動向とは関係がない。

 さらに疑問なのは、その後の『関係者は「まだまだイケる」と意外に強気』という一節。ここでは、アミューズ広報の

「韓国映画はハリウッド映画と同じ一つのチョイスとして日本で定着している」

 というコメントや、NHK番組広報の

「良い韓国ドラマがあれば、また放送する。地上波では引き続き放送している」

 といったコメントを紹介し、『「韓流ブームは終わっていない」と言いたげ』としているのだ。韓流ブームの恩恵に与ってきた関係者が、『ブームは終わっていない』と必死に強弁しているようなイメージを狙ったのではないか。

 だが、原文を読めば、「需要はあるので、良いものは今後も紹介していく」という趣旨であることは明らかだ。「韓流ブームは終わっていない」というニュアンスはひとつもない。記者が頭の中で補っているだけである。

 最後は、ヨン様人気が健在であることを紹介し、

「ヨン様が06年もドラマや映画に出ていたら、韓流は落ち込まなかったかもしれない、韓流ブームとはヨン様ブームで、ブーム復活のカギを握っているのはヨン様ではないか」

 と結論付けている。ヨン様は強力な固定客が付いたということであって、彼が韓流ブーム復活のカギを握っているなんてあり得ない。

 韓流ブームはとっくに終わっている。それは事実だ。韓国ものなら何でも良いと、内容に厚みのない作品を大量投入し、ライト層に飽きられたことが原因だ。それでも予想を超えて長く続いたし、ブームに左右されない固定層を獲得したことも事実だろう。

 僕の実感では、ドラマは当分厳しいが、K-popや映画はきちんとプロモートすれば、充分商売になると思う。ただ、映画については、大ヒットした「消しゴム」「四月の雪」の夢から醒めていないようで、最近の公開作は上映規模がやや大きすぎるのではないだろうか。

 J-CASTは面白い記事も多いだけに、一部の読者におもねるような記事は残念だ。