銚子電鉄の旅

Choshi01_2

 今日は1日振替休日に決め、銚子電鉄に乗ってきた。内山健治郎元社長による横領事件に始まる経営危機問題を聞いて以来、ぜひ現地に行って乗ってこようと思っていた。

 この電車に乗るのは、実に四半世紀ぶり。小学生の時、総武本線と成田線に乗りに来たついでに乗って以来になる。昼過ぎに銚子駅に着くと、駅前の様子はすっかり変わっていたが、電鉄の小さな電車はそのままだった。

Choshi09_2

 週末は鉄ちゃんや2ちゃんねらーでいっぱいだろうと思い、平日に来たのだが、それでもけっこう観光客が乗っていた。犬吠岬観光の玄関となる犬吠駅までは17分、終点外川までは19分の旅だ。運賃は片道310円だが、620円で1日乗車券を買った。

 電車は、雑草だらけの軌道をガタゴト走る。直線区間でも大きく左右に揺れ、軌道がかなり老朽化していることがわかる。じべたで昼寝しているイヌさんや、犬吠岬灯台を眺めながら、まずは終点外川へ。

Choshi010_2

 外川駅は、20年前と何も変わっていなかった。周囲の民家や信用金庫はだいたい新しい建物に変わっており、駅だけが時代に取り残されたような、アンバランスな風景。現在観音駅で売られている鯛焼きは、昔はこの外川駅で売っていたような気がするのだが、気のせいだろうか。

 線路はここで終わっているが、その先に細い路地が続いている。てくてく歩いていくと、やがて海が見えてきた。

Choshi02_1

 坂を下りきったところが、外川漁港。あまり人影は見えず、静かだ。なんとなく、右の方へぶらぶらすると、民宿や食堂が点在している。いちばんシブい食堂を選んで入ってみた。

Choshi05_1

 犬若食堂。名前がいい。店先では、おっちゃんが鰯を干している。のれんをくぐると、中にはけっこう人がいた。

「こんにちは。ご飯、たべられますか」

 全員がこちらを見る。間違えて他人の宴会に入ってしまったような。

「あ、お客さんだよ~」

 先客は、全員常連さんらしい。60代前後のおやじさんやら、40前後の夫婦やらが、午後2時過ぎだというのに焼酎で楽しくやっている。せっかくなので、僕もチューハイを注文して、仲間に入れてもらった。

Choshi03

Choshi04

「ここの魚はね、みんな目の前で捕れたやつだから。冷凍もんなんてひとつもないよ」
「メカのアラ食べたことある? ちょっとお母さん、お兄さんにメカのアラ出してあげて」
「僕らの話聞いてもつまらんでしょ。じいさんになると、セッ××の話ばっかりだからよ」

 こんな調子で、メカジキの刺身とアラ煮をいただく。刺身は新鮮そのもので、アラ煮は肉じゃがの肉の代わりにメカジキのアラが入っている感じ。どちらも旨かった。

 外川駅には戻らず、ひとつ手前の犬吠駅まで歩いて「地球が丸く見える丘展望台」に向かう。犬若食堂に長居しすぎて、もう4時近い。

Choshi07

 犬吠駅から展望台までは、徒歩10分ほど。屋上に上がると、なるほど、素晴らしい眺めだ。360度視界が開け、そのうち330度は海。北側には市街地があり、九十九里の方面には屏風ケ浦の風力発電所が見える。今日は少しガスが出ているが、空気がきれいなら、九十九里の向こうに富士山が見えるはずだ。この眺めは、北海道中標津の、開陽台展望台にも負けていないと思う。

 これほどのスポットが、東京からわずか2時間のところにあるのに、今ひとつマイナーな存在なのは惜しい。これは、房総の観光地全体に言えることで、「千葉」がすっかり住宅地のイメージになってしまった結果、千葉を旅する人は、激減した。南房総に行くと、ホテルの廃墟がそこらじゅうにあって切なくなる。

 そんなことを考えるうちに、日が暮れてきた。カップルにまじって、大平洋に沈む夕日を黙って眺める。電話が鳴った。来週の打ち合わせについての連絡。ああ、今日平日だったっけ。

Choshi08_1

 暗くなって銚子駅に戻り、駅前でもう一度刺身を食べて、帰途についた。明日は働くぞ。

コメント

  1. かごしぽ より:

    いいですねぇ。
    「散歩の延長のような小旅行」って感じなんだけど
    満足度が高そうで。
    こういう時間を創出したいものです。

  2. TKC より:

    いいですなぁ、日帰りの小旅行。
    最近はなかなかできていないので、たまにはしてみたいです。
    写真にある小道、僕も歩きました。何年前のことだろう…。

  3. ひろし より:

    銚子へ行かれたんですね。私も、1月7日に行ってきました。
    むかし6年間住んでいた街です。昔よくかよった居酒屋へ行って
    滞在時間3時間半。
    地球が丸く見える丘展望台はどうも新しくなったようですね。
    当時はタダのビルの屋上でした。
    このコメントは約1年ぶりです。チャンドッテの記事以来です。
    韓国語への興味はあんまりなくなりましたがこのページはよく
    見ています。

  4. かんりにん より:

    >>かごしぽさん
    ちょっとした、ぶらり途中下車の気分でした。あの辺りは、
    佐原もそうですが見所が多くて、良いですね。
    >>TKC
    僕も、外川は本当に小学生以来だったと思います。
    珍しく平日だったんで、郵便局にも心動きましたが……。
    通帳再発行してもらわないと……。
    >>ひろしさん
    お久しぶりです。銚子に住んでいらっしゃったなんて、羨ましい
    ですね。僕も、昔住んでいた頃に通った店は、今も時々行きます。
    帰ってきた気分になって、良いものですよね。

  5. Northerner より:

    銚子ミニトリップ

    銚子へショートトリップに行きました。
    出発は新宿から銚子まで週末に運転されている臨時列車<快速すいごう号>。4人向かい合わせの団体用列車なので指定券を4枚取り、最近会う機会のあった友人に声を掛けて4人で銚子へ向かいました。
    千葉県はいまJRとタイアップした観光キャンペーンをやっており、この列車も家族連れが乗り込んでいて、佐原から先では次々と降りていきます。駅前に大型バスが待ち受けている駅もあります。
    銚子に着くとかなりの人が銚子電鉄に乗り継ぎ、たった1輌の電車は吊り革も足らないくらいの混雑になり…