高麗神社

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 埼玉県日高市の高麗神社に行ってきた。

 高麗神社は、666年に高句麗から日本に派遣されたと言われる高麗王若光を祭る神社だ。若光が日本に来た2年後に高句麗は新羅・唐連合軍によって滅ぼされ、以来生涯を日本で過ごした。716年には、武蔵国高麗郡(現在の日高市高麗)の首長として赴任し、関東各地から集まった1799人の高句麗人と共に、この地を開拓した。

 高麗神社の宮司は、代々高麗王若光の子孫が務め、現在の宮司は59代目に当たる。

 神社の入口には、1992年に民団埼玉県本部から寄贈されたというジャンスンがある。ジャンスンは、「天下大将軍」と「地下女将軍」が一対となり、古くから韓国の道祖神の役割を果たしてきた守護神だ。ちょっと早めの七五三なのか、着物を着た親子連れが、ジャンスンの横を歩いていく。外国の文化をすんなり受け入れる、いかにも日本らしい風景だ。

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 本殿の門には、「高句麗神社」と書かれた扁額がかかっている。これは、1895年(明治28年)に、朝鮮王朝の外交参議、趙重応(チョ・ジュンウン/ちょう・じゅうおう)が書いたもの。高麗神社の「高麗」は高句麗の意味だが、韓国には高麗王朝(918~1392)という政権もあるので、それと区別するために小さく「句」の字を書き込んだのだという。

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 この扁額を書いた趙重応は朝鮮王朝末期の政治家だが、代表的な"親日派"の一人として、韓国では非常に厳しい評価を受けている。

 だが、高麗神社自体は、昔から日韓友好のひとつのシンボルだ。民団からはジャンスンを贈られ、境内には駐日韓国大使などの記念植樹がいくつもある。昨年には、日韓国交正常化40周年の記念式典も、大々的に行われた。考えてみれば、皮肉な話ではある。

 駐車場で、「直売」と称して何かを売っているおじいさんを見かけた。なんとなく目があって、会釈したこともあり、参拝を終えた後見に行ってみた。

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 おじいさんの名前は、高麗英治さん。ご自身で執筆され、新風舎から共同出版で刊行した絵本「ツバメとおじいちゃん」を、売っていたのである。毎年、自宅の軒先に巣を作るツバメ一家に起こった事件を描いた作品で、NHKでも紹介されたそうだ。高麗神社の話もいろいろ聞かせてもらったので、一冊購入した。

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 高麗さんも、やはり高麗王若光をはじめ韓国にゆかりある家系で、生まれは旧満州国奉天市だそうだ。心温まる絵本の向こうには、きっと大きな物語があるに違いない。