モラン市場の子ネコ

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 ソウルの南、城南市のモラン市場へ出かけた。モラン市場は4と9の付く日に開かれる五日市で、昔ながらの市場の雰囲気を残している。日用品から食料品、薬品などなんでも扱い、また食用犬の卸市場としても、最大級の規模をもつ。
 愛玩動物の売場で、子犬たちに囲まれて、2匹の子ネコが鳥籠に入れられていた。その籠の上に、もう一匹子ネコが。ちょびひげを付けた白黒で、てっぺんが丸い鳥籠から今にも落ちそうだ。子犬に囲まれ、怯えてぴぃぴぃ鳴いている。
 可哀想になって、ひょいと抱き上げた。がたがた震えているのがわかる。
「5000Wでいいわよ。ああ、日本人なの。じゃあ、ゆっくり可愛がって行って」。
 おばちゃんも、悪い人ではないようだ。左腕に乗せ、そっと撫でているうちに、震えは止まった。だんだん落ち着いてきたようで、次第に僕の指にじゃれるようになってきた。
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▲ちょびひげは、手前の籠の上で鳴いていた
 15分くらい、そのままあやしていただろうか。そろそろ行こうかな、と思ったその時。
「わあ、見て!かわいい!」
 高校生くらいの女の子が二人、僕の腕の中のちょびひげを見て駆け寄ってきた。
「おじさん、このネコ、買うんですか?」
「ちょっと抱いてみてもいいですか? わー、よく馴れてる。この子ほしい~」
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▲やっぱり、可愛くない。でもそれがいい
 ちょびひげは、僕が撫で続けたおかげか、すっかりご機嫌で精一杯の愛嬌を振りまいている。ネコ、買いに来たの?
「うーん、彼女が飼いたいって言うんで見に来たんですけど、まだ親の許しはもらってないんです。彼女んち、犬も飼ってて、みんな動物好きなんですけど……」
「ね、見て。あたしの手舐めてる! この子がいいな。あたし、ママに電話してみる」
 女の子は、携帯で電話をかけた。が、誰も出ない。
「どうしよう、無断で連れて帰ったら、怒られるかも……」
「うーん、あなたのうちなら、大丈夫だとは思うけど……」
「でも、犬がいるし……」
 何度電話しても母親は出ない。とうとう、彼女たちは、親に無断でちょびひげを連れて帰ることを決断した。
 かわいさあまってネコを連れて帰り、親に「捨てて来なさい!」と怒られるというのはよくある話だ。このくらいの子ネコでは、捨てられたら最後、ネコ好きの少ない韓国で生き延びることはできまい。迷った。止めるべきではないのか。
 でも、このちょびひげは、僕がふと可哀想に思って抱き上げたおかげで落ち着きを取り戻し、彼女たちに「可愛い、ほしい」と思われたのだ。これも運命ではないか。このぶさいくな子ネコがこれほど韓国人に気に入られるのは、もしかしたらこれが最初で最後かもしれず、それは、この韓国では奇跡的な幸運なのかもしれない……。
 僕は、彼女たちに名刺を渡し、絶対に捨てたりしないこと、育て方でわからないことがあったら連絡するように言った。そして写真を撮り、メールアドレスを教えてもらった。
「はい、ありがとうございます。必ず大事にします。名前は……モラン市場で買ったから、モランがいいわ。モラン、モランや~」
 そう言って、二人は大事そうにちょびひげ…モランを抱いて去っていった。白黒のモランが、家族に受け入れられて幸せに育つことを祈りたい。

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コメント

  1. abbie may より:

    そうなんですよね  野良猫すらあまり見ない。
    韓国ってかなり猫好き人口低いですよね
    私も周りの韓国人から「日本人て猫好きだよね。なんで?」と聞かれたこともあります。 
    でも最近は少しずつ増えてきてるみたいですね。^^

  2. かんりにん より:

    うちの周りには、けっこういますよ。ノラネコ。
    でも、日本に比べると猫口密度は低いですね。
    最近は、若い人を中心に猫好きは増えてます。
    とくに、美術やってるような友だちはみんな好きですね。
    弘大に通っている友だち曰く、表情が豊かでいい、とのこと。
    けっこうわかっている人はいるもんです。

  3. azuki より:

    何か猫好きな私としては切ない文でした。
    そんなに生きていくのが過酷な国とは・・・。ちょび髭の猫ちゃん大丈夫かな?今回お泊りしたソウルのお家で猫ちゃん飼っていましたけど、外猫でした。犬小屋に入って・・・。子猫3匹生まれていました。でもどうなるのかな?あのニャン子達?家の飼い猫に比べたらとてもお利口で大人しく、控えめで・・・家の亜津紀(猫の名)は網戸を破って今日も脱走!そこがまた可愛い♥