高速鉄道KTX幻の始発駅

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 明洞ミリオレにあるオシャレな眼科で診察を受けてから、地下鉄3号線で高陽市花井(ファジョン)へ。ソウルの北にあるベッドタウンで、高層マンション(韓国語ではアパート)が建ち並んでいる。韓国人と結婚した友だちの何人かは、こうした郊外の住宅地に住んでいるそうだ。スーパー、コンビニ、ショッピングセンター、映画館と一通りのインフラが揃っていて、市内へも地下鉄で30分。悪くない。

 とりあえず来たマウルバス(町内バス)に乗って幸信洞をめざす。適当な交差点で下ろしてもらい、団地の中をてくてく歩いて到着したのは、国鉄幸信駅だ。

 町はずれにある小さな駅。団地の波がすぐ近くまで迫っているが、周囲は建設中のビルや畑が多い。人通りも少ないへんぴな小駅に、いったい何の用があるというのか。

 実はここ、韓国高速鉄道KTXの、隠れた始発駅なのである。

 盛り土に隠れて見えづらいが、駅の向こうには広大なKTXの車両基地がある。KTXの列車は、すべてここから15km南のソウルor竜山駅へ回送されるのだが、その内の4本が、旅客営業をしているのだ。将来的には立派な駅舎を作り、本格的なKTX発着駅に発展させようとしているようだが、今は、市販の時刻表はもちろん、ソウル駅などからも一切無視されている。いわば、幻の始発駅。

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 新駅舎建設を控えたプレハブの仮駅舎の前には、「高速鉄道乗車場入口」の表示がある。時刻表には、たった4本の列車が記されており、まるで国鉄の赤字ローカル線のような趣だが、それでもKTXのロゴが誇らしげに表示されている。もちろん、利用者は限りなくゼロに近い。京義線のホームから、KTX用発着ホーム、そして運行司令室へと続く長い跨線橋があるが、KTXの発着時以外は入れない。試しにソウル駅まで乗ってみようかと思ったら、基本料金の1万600W(約1000円)がかかるそうだ。今度、全線乗り放題のKRパスを持っているときに乗ってみよう。

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▲駅の向こうに見えるKTX運行司令室

幸信駅へは、ソウル駅から京義線の通勤列車で25分。1時間ごと、1200W。または、地下鉄3号線花井駅から16番マウルバスで10分。