韓国スキージャンプを訪ねて2

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▲スキー場の奥から姿を現したジャンプ台
8月29日。ソウルから列車とバス、そしてタクシーを乗り継いで4時間あまり。人家もまばらな山奥に、茂朱ジャンプ競技場はあった。
がらんとしたコンドミニアムに荷物を下ろし、坂道を10分ほど歩いて「ジャンピングパーク」に行く。鮮やかな夏の空の下、静かにジャンパーを待つジャンプ台。一見美しいが、よく見ると、雪の代わりに用いられるプラスチックファイバー樹脂は乾いて荒れ、下のブレーキングトラックはなんと天然芝である。着地したジャンパーは、泥や砂利のある天然芝に、時速60km以上の猛スピードで突っ込まなくてはならない。危険この上なく、信じられない話だ。どうしてこんなことになったのか。
茂朱リゾートは、韓国版バブルの産物だ。リゾートブームに乗って建設されたが、ソウルからのアクセスがあまりに悪く、入場者数は低迷。97年に官民挙げて誘致したユニバーシアード冬季大会が終了すると、あっという間に経営破綻した。オリンピック誘致のため再建が始まったが、予算は激減。加えて競技人口一桁の超マイナー競技である。満足な台の整備を望む方が無理だった。プラスチックファイバー樹脂は非常に高価で、維持にもコストがかかる。だから、着地点の斜面以外、満足に導入できなかったのだ。こんな状態で試合をやるのかと呆れるべきか、それでも国際基準を一応クリアできるだけ整備してあることを褒めるべきだろうか。
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▲「歓迎2000FISグランプリ 茂朱スキージャンプアジアシリーズ」
選手たちが出てきた。今期サマーシリーズのポイントリーダー、ヤンネ・アホネン(フィンランド)、昨年の世界チャンピオン、マルティン・シュミット(ドイツ)の姿が見える。そして、葛西紀明ら、日本のトップジャンパーもいる。
スタンドで見守る観客は、僕を含めて20人ほど。僕以外は、ほとんどが関係者だ。やがて、公式練習が始まった。ファンファーレも何もない、のどかな夏の昼下がり。聞こえるのは、スキーの音とヒグラシの声だけだ。場内アナウンスは選手名の読み方がわからずごにょごにょ言い、前に飛んだの選手の名前をコールしたりする。電光掲示板の表示もめちゃくちゃだ。選手がスタートしているのに、着地点に水をまいているスタッフもいて、見ている方が冷や冷やする。選手たちも、競技よりもフルスピードで天然芝に突っ込まなくてはならないことに神経を使っていた。着地と同時にしゃがみ込み、転倒しないようにバランスをとる。明日も、こんな調子で行われるのだろうか・・・?
その晩、韓国チーム主催のウェルカムパーティで、僕はようやくムン・チョンセン氏ときちんと挨拶することができた。世界のトップジャンパーが勢揃いし、ムン氏は満足げだ。ほとんどのスタッフが初めてだが、問題は今日すべて出した。明日は必ず成功するだろう。彼はそう言うと、ワインで乾杯した。
(続く)

コメント

  1. 書記長 より:

    続きが超気になってるのは俺だけ??
    ちょっと突っ込み。
    その1の
    >冬の設備がままならず
    雪の問題っすか?夏のファイバーの方が高価なような気が。
    冬にやってないってのは、禿しく残念。
    その2
    >選手たちも、競技よりもフルスピードで天然芝に突っ込まなくて>はならないことに
    チキンレースみたいですな。
    >ほとんどのスタッフが初めてだが、問題は今日すべて出した。
    ダメ出しデツカ?
    基礎スキーは韓国ですごく人気あるんですがねぇ。
    全日デモのビデオとか持ってる人、結構いるし。
    デモ来た時、日本より盛り上がって日本人デモ超ご機嫌だったとか。

  2. かるろす より:

    どーも。3年以上前の文章なので、かなりヤバイのですが、まあご愛敬ってことで。
    >雪の問題っすか?
    うんにゃ、台の整備は、自然条件に左右される冬の方が大変らしいよ。要は、専門知識を持った人がいない。