そんなわけで、昨日15日、下垂体腺腫(良性腫瘍)による、先端巨大症の手術を受けて参りました。
手術というと、ストレッチャーに乗せられて、ガラガラガラ……と手術室に運び込まれ、「手術中」のランプが付く……みたいなイメージがありますが、普通は、こんな感じでスタスタ歩いて入っていきます。この病院の場合、手術室はこの扉の向こうに10室以上ずらりと並んでいるので、親族が「手術中」のランプを見ることはありません。ランプが消え、執刀医が出てきて「先生!」という展開はないわけです。
「んじゃ、行ってきます」
画像はぼかしてありますが、奥の看護師さん、写真を撮る親父と手を振る僕を見て爆笑しています。
さて、てくてく歩いて手術室に入ったのが午前8時35分。
第4手術室というところに入りまして、まずは、口の中をチェックします。先端巨大症の患者は、舌や扁桃腺肥大して、人工呼吸機の管が入れにくい場合があるので、チェックします。
「大丈夫そうですね。お顔はアクロ(先端巨大症)の特徴がありますけど、お口はそうでもないですね」
看護師さん、一言余計だよ(笑)。
ここでようやく、手術台の上にどっこいしょ、と寝そべりました。胸に心電図の端子を付け、酸素マスクをあてがわれます。
「ほら、アクロの患者さんは鼻が肥大している場合が多いから、ちゃんと当てるのよ」
だから一言余計だって。
酸素マスクから酸素を吸うと、なかなか良い気分。続いて、左腕に点滴の針を刺します。麻酔の注射は痛い!といろいろな人に脅かされましたが、これは普通の点滴針。僕は左腕にちょうど良い血管があるので、ほとんど痛みを感じることなく、針が入りました。
ここで、執刀医のY先生登場。下垂体の専門家としては、日本で5本の指にはいる、「ゴッドハンド」を持つ名医です。
「じゃあ、ちゃんと取るからね」
全く普段通りの、とぼけた口調で語りかけるY先生。これから、大脳の直下にアクセスする大手術をするようには全然思えません。
「じゃあ、お薬入れます。ちょっと滲みますー」
看護師さんの合図で、左腕の点滴から、冷たい薬が入ってきました。滲みるのではなく、ひんやりという感じだな。生理食塩水と変わらないや……。
そんなことを思った次の瞬間。天井がくにゃっとゆがみ、すーっと意識が遠のいていきました。
・・・。
「……りはらさーん、聞こえますかー」
頬だか胸だかを、軽く叩かれたような気がしました。なんだよ、人が気持ちよく寝ているのに、起こすことないじゃん……。
「くりはらさーん、寝ちゃだめですよー …寝はだめですよー」
二度寝……と言われたような気がして、なんで寝てるんだっけ?と冷静になりました。ああ、そうか、僕は手術を受けたんだっけ。えーと、もう終わったの?
「くりはらさーん、では、ゆっくり口で深呼吸してみてください」
深呼吸? 鼻で息を吸おうとして、吸えないことに気づきました。鼻に詰め物がされているようです。ああ、口で息をすればいいのか。あれ、この管は何?
舌に当たったのは、人工呼吸器の管でした。でも、ちゃんと自分で呼吸できます。スー、ハー、スー、ハー。
「大丈夫ですね。じゃあ、管を抜きます」
麻酔から覚め、自力呼吸ができることを確認して、管が抜かれました。ちょっとむせたけど、胃カメラのような気持ち悪さはあまりなし。
「だいたい取れたよ。大丈夫」
先生の声が聞こえました。だいたい、ということは、ちょっと残ったのかな……「少し残りました?」と聞こうとしましたが、声になりません。「大丈夫、大丈夫」。先生は頷きました。
「今、何時ですか?」
かろうじて声を絞り出すと、13時過ぎとのこと。11時か12時くらいに終了予定とのことだったので、思ったより時間がかかったようです。後で聞いたところでは、思ったよりも腫瘍が大きかったのだとか。
帰りは、もちろんストレッチャーで寝たまま戻ります。まずは手術室内の回復室でしばらく安静にした後、すぐに自分の病室に戻ります。通常は、1日はICUで過ごすのですが、ICUが込み合っており、僕の場合はナースセンターのすぐ隣りの病室ということで、すぐ戻ることになりました。
この頃には、だいぶ意識もはっきりしてきて、違和感を感じるのは鼻と下の方のみ。通常の3倍くらい鼻づまりをおこしているような感じですが、それ以外はほとんど痛みは感じません。下の方は、まあ、なんだかいわゆる管が付いています。
病室に戻り、3分後の写真が、これ。
Vサインかよ……。考えろよ、自分。
意識もはっきりしていて、痛みもほとんどないのですがこうやってみると痛々しいですな。昨日は、この状態でツイートしていました。
これが、昨日、15日14時20分ごろの写真。今は、鼻の詰め物と点滴の針以外はすべて取れ、椅子に座って、このエントリを書いています。詰め物と点滴針も、明日には外す予定。
僕は特に経過が順調なようで、術後、鎮痛剤の類は一度も投与せず、詰め物を取るのも、1日前倒しとなりました。
もっとも、ちょうど1週間後に予想される合併症があるため、入院期間は当初の予定通りとなります。
というわけで、大変元気です。ご心配をおかけしました。
コメント
検査とはいえ、入退院を繰り返されていたので、
とても心配しておりました。
よかった!これが最後の入院であってほしいです。
何度も入退院を繰り返すところが大先生を髣髴させます。
ご心配をおかけしました。
最初の入院から、今回の手術まで、すべて当初の予定通りのスケジュールでした。
たぶん、この後一度転院して退院したら、当分は入院はないと思います。
まあ、経過観察は必要でしょうが……。
手術後の初日記。
ちょっとハラハラ、そしてホッとしながら読んだら・・・
ピースサインに爆笑しました。
手術成功おめでとうございます。
大きな手術の経験がないもので、その辺りも興味深く読ませていただきました。
あ、全身麻酔は、腰から入れるものだとばかり思っていました。
今年にはいっていろいろ大変でしたでしょうがこれで一安心ですね。
40直前お互いガタがくるころでしょうからちょうどよいお休みになれましたでしょうか。あとは回復してますますの活躍、雨乞いなど期待しています。まずはお大事にしてください。
無事に手術が終わったようで、安心しました。
今のうちにゆっくり休養してくださいね。
無事に手術が終わってお疲れ様でした。
これで大きな心配事もなくなりますます仕事に精が出ますねヽ(´▽`)/
この機会にゆっくり休んでくださいねぇ~
小倉さん
ありがとうございます。
腕は静脈注射でしたから、うとうとさせるだけで、身体全体を麻痺させる麻酔は別途投与されたものと思います。腰には、注射跡はなかったですが、そういえば足に割合大きな注射痕がありました。
苦痛は、驚くほど皆無でした。
ブーニャンさん
ありがとうございます。早く回復しないと、全国に渇水の嵐がきてしまいますね。頑張って復帰します。
ハイジさん
ありがとうございます。回復の速さに自分でも驚いています。だらだらと休みたいと思います。
320くん
ありがとうございます。
仕事か……。なんかここで始めるかな……。
まあ、まだ麻酔が密かに抜けきってはいないらしいんですが。
無事に手術も終わり、快復傾向にあるようで、何よりです。
しばらくは禁酒しなくちゃならないでしょうし、年末あたりには快気祝いをやりましょう。
毎日見せていただいております。
無事に手術を終えられたとのこと、よかったです。手術法の進歩のおかげか、侵襲も少ないようですが、回復期、お大事にしてください。
順番が逆になりましたが、ヘランの旅、もしかして同行取り止めとかになるのかな?などと心配していましたが、そちらも盛況だったようで、安心しました。
ともかく、繰り返しになりますが、お大事に。新しい記事、楽しみにしておりますので。
TKCくん
どうもありがとう。退院すれば、基本的に禁酒ではなくなるので、また飲みに行きましょう。
あ、そうだ。これ言わないと。
「快気祝いをやりましょうって、そりゃこっちがするもんだろう(笑)」
たかとうさん
ありがとうございます。本当に驚きの低侵襲手術で、もう見た目には何も普段と変わりありません。鼻をかめないので、風邪声になってはおりますが。
ヘランツアーは、早い段階から主治医に相談しており、「手術やってからでも行けますよ。もし心配なら、帰られた後にやりましょう」ということになっていました。
その代わり、9月は薬でGHを抑制することになり、9月頭に二度目の入院をすることになってしまいましたが……。
ゆっくり休んで、復帰するつもりです。
はじめまして。
先端巨大症関連の記事、興味深く拝見しました。
私もあと一週間後に、同じ手術を虎の門病院で受けます。
いろいろと参考になりました。
ありがとうございます!
股旅庵馬ん次さん
そうですか。山田先生の執刀ですね。
きっとまわりの方も心配されていると思いますが、拍子抜けするくらい負担の少ない手術です。
鼻につめものをしている間はうっとうしいですが、それも2~3日の辛坊です。
手術が成功……は当たり前なので、経過が良好であることをお祈りします。