アドバイス

 プリンタのインクを買いに、某量販店に来たときのこと。

 コンパクトデジタルカメラの売り場を眺めていると、60代くらいのおじいさんが近づいてきた。

 おじいさんは、リコーのハイエンドコンパクトデジカメ、「GR DigitalII」を手に取り、しげしげと眺めている。

「……つぅ?」

 GR Digitalに「2」が出たことを、このおじいさんは知らなかったのかな。そんな考えが頭をよぎった時だった。

「あのう、お兄さん」

 おじいさんが、話しかけてきた。

「GR DigitalIIというのは、前のと何が変わったんですかね」

 僕は、ボタンダウンにジーンズ、リュックという姿(苦笑)。どう見ても、店員ではない。困惑した僕は、おじいさんに向かってきっぱりとこう言った。

「センサーが、800万画素から約1000万画素になったんです」

「ほう」

「処理速度が全体に向上しまして、RAWでの撮影が実用的になりました。それと、水平を測定する、電子水準器も搭載したそうですよ」

「ふうむ、そうすると、レンズのほうも……」

「あ、いえ、光学系は初代から変わっておりません。」

「そうですか。では、写り自体は変わらないということですな」

「そうですね、高感度のノイズはだいぶ減ったと聞いていますが……」

「なるほど、どうもありがとうございました」

 おじいさんは、初代GR Digitalのユーザーだったらしい。

 それから、5分ほどたった頃。僕の隣で、韓国人らしい2人組の女の子が、流ちょうな日本語で店員を呼び止めた。リコーの、GX200を指差している。

「スミマセン、これの、キャップがほしいんですけどー」

 GX200のレンズキャップは、昔ながらの着脱式を採用している。これは、電源を入れる時にいちいちキャップを手で外さなくてはならないので、評判があまりよくない。そこでメーカーは、最近になって、カメラに取り付けたまま自動で開閉するレンズキャップを1680円で発売したのだ。彼女たちが指差しているキャップも、そのオプション品である。

 だが、若い店員には、それを知らないようだった。

「あ、レンズキャップだけの販売はしておりませんので」

 次の瞬間、考えるよりも先に僕の口が開いた。

「いや、売ってますよ。オプションのやつですよね」

「!?」

 しまったー……と思ったが、もう遅い。

「えーと、このレンズキャップは、オプション品として単体で販売されているはずですが……、どうも」

 最後の「どうも」は意味不明である。

 店員は、憮然とした表情で「少々お待ちください」とその場を離れ、まもなく戻ってきた。

「すみません、それ、在庫切れなんでー」

 つくづく、接客のなっていない店員である。韓国人らしい2人は、「えー残念」と言って、その場を離れて行く。

"この先のマッ○カメラには、在庫ありますよー、価格は1500円ですよー"

 とアドバイスしたかったが、やめておいた。まあ、なんて親切な人なのかしら、と思ってもらえる確率は、限りなくゼロに近い。

 新宿西口で、商売でも始めるかな。

コメント

  1. mai より:

    おじいさんからは、何て親切且つ詳しい人だろう!と思われたでしょうね(笑)

  2. ききみみ より:

    家電に詳しいお笑い芸人が「家電芸人」として時々テレビに出てますがかんりにんさんはどういうふうに呼んだらいいんですかね・・「カメ鉄」?・・「猫鉄」?

  3. かんりにん より:

    maiさん
    それならいいんですけどねえ……w
    ききみみさん
    すみません、必ず「鉄」が付くのは仕様ですか?