あのドラマを見るために…

 いやあ、今日はすごい黄砂だった。世界が黄色い。ほとんど何も見えない。移動日でよかった。

 さて、やってきた大田。実は、大田に降りるのは初めてだ。位置的に微妙で、観光地もほとんどないことから、これまでずっと通過ばかりしていた。

 今回も大田自体には用はなく、明日公州に出るための中継地だ。今日中に公州まで行くこともできたが、需城温泉に泊まることにする。

 なぜか。

 今日は日曜日。なんとしても、20時までに宿に入りたかったからである。

 19時過ぎ。市内バスを降りて、なんとなくモテルがありそうな方向に向かって歩くと、あった。小さな川に沿って、数軒モテルが並んでいる。最近は部屋にPCを備えているところも多く、PCなしの部屋に比べて1万W高が相場だ。

 なんとなく、きれいそうな、それでいて必要以上にやらしくなさそうな所を選んで、扉を開けた。フロント、というか受付部屋に座っていたおばちゃんに聞くと、PCなしで3万W、PCありが4万Wだという。都市部ならこんなもんだろう。

 ネットはPC房に行ったほうが快適なので、PCなしを選択。キーを受けとりながら、なんとなく、聞いてみた。

「日本の放送は見られますか?」

 こんな質問をしたのは、初めてだ。いまや韓国では、どこへ行ってもケーブルテレビにNHKワールドプレミアムが入っており、モテルで見られなかったことはここ数年ほとんどない。もちろんよ、大丈夫。そんな答えが返ってくるものと思ったが。

「さあ、どうだったかしらねえ、ひとつくらい、見られるんじゃないの」

「…先に部屋を見せていただけますか」

「大丈夫よ。きれいな部屋よ」

 この後の展開は書くまでもないので、場面は突然40分後、19時55分ごろに飛ぶ。僕は、1級ホテルのホテルリベラの前を歩いていた。

「大田では、NHKは見られないのか…。リベラに泊まれば、当然BS見られるよなあ」

 が、そのために10万W以上払ってホテルに泊まるのは、どう考えてもアホである。

 いや、NHKを見たいがために、モテルを4軒回ってしまったほうがアホと言うべきであろうか。もはや、これは意地なのだ。

 結局、あとでPC房で調べたところ、大田のケーブルテレビでは、NHKは見られないということがわかった。くそう、こんなことなら、慶州かテグに泊まればよかった。

 それくらい、「風林火山」は面白い。ああ恥ずかしい。