MRI初体験

 僕の膝は、もう一年余り爆弾を抱えている。ふだんはそれほどでもないが、悪化すると負荷をかけた時に痛みが走り、ひどいと水が溜まるのだ。

 何度か病院で診てもらっていたものの、なかなか良くならない。そこでしつ関節専門の医師に診てもらったところ、 MRIを撮ることになった。MRIと聞くと、腫瘍の疑いなどを想像してしまうが、

「結果は、帰国後に聞きに来てくだされば結構です」

 どうやら、深刻なことではなさそうだ。調べたところ、椎間板ヘルニアなど、軟骨関係の病気もMRIで検査するものらしい。

 その病院にはMRIの設備がなく、事務所から歩いて10分のところにある某病院を訪れた。

 受け付けを済ませ、ロビーで待つ。世にも暗い表情で、一点を見つめて座っている中年のおじさん。どんな病気を調べにきたのだろう。名前を呼ばれて問診室に入ると、待っていたのは白衣ではなくジーンズ姿の女性だった。病院らしさをできる限り抑えようということだろうか。

 足の検査なので着替える必要はなく、更衣室でベルトなど金属製品だけ外す。指定された廊下の奥には待機用の椅子が幾つかあり、椅子の間には小さな仕切りがある。プライバシー保護のためかもしれないが、あまり意味があるとは思えない。

 1分もしないうちに呼ばれ、MRI検査室に入った。技師と看護師の二人がいて、中央にテレビで見た巨大な機械が鎮座している。siemens製品らしい。幅50 cmほどの狭い台に横になり、足の位置を合わせる。看護師が、「防音用に」と大きなヘッドホンを付けてくれた。小さな音量でクラシックが流れている。ゆっくりと台が動き、腰のあたりまで機械の中に入った。

「それでは、15分ほどかかります。気分が悪くなったらこれを握ってください」

 ブロアーのようなゴムを持たされると、看護師と技師は部屋を出て行った。

 天井を眺める。病院で天井を見つめて過ごすのは、学生時代急性アルコール中毒で運び込まれて以来のことだ。懐かしいような、恥ずかしいような、不思議な気分。

ブー ガガガガ……ガンガンガン

 大きなノイズ音が聞こえてきた。ヘッドホンをしているが、もうクラシックは聞こえない。痛いとか苦しいとかいうことはなく、ただ大きな音だけが連続する。なんだか眠くなってきた。

 音が聞こえなくなって、目が覚めた。終わったらしい。どうせなら、もう少し寝ていたかったが。

 ロッカーから荷物を出し、待合室で会計。

「7980円になります」

 財布を中身を調べると、所持金7995円。焦った。午前の診察やらクリーニングやらで、けっこう出費していたのだった。医療費は高い。

 さっきのおじさんはどうしただろう。

 僕の結果は、4月になってから。

コメント

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