昔消火器今通信

 夕方5時過ぎ。事務所に来客があった。
「私ども、NTTコミュニケーションズグループで、回線デジタル化工事を担当している者です。現在、この地域のデジタル回線化を一括して進めておりまして、ご同意をいただきに伺ったのですが」
 また来たか。
「ニュースなどでご存じかとは思いますが、数年後にはすべての電話がIP電話となり、現在のアナログ回線は使えなくなります」
 春だねえ。
「IP電話に移行しますと、電話代が無料になります。それで、NTTの回線からビルまでのデジタル接続はNTTの方で工事をさせていただき、私どもといたしましては、ビルの内部の回線につきまして工事をさせていただくために参ったわけです。最近、詐欺まがいの業者が横行しておりますので、十分ご注意いただきたいのですが、私どもはNTTグループの関連企業ですので……」
 あなた誰? 名刺ください。
 今までしゃべっていた男が言葉に詰まると、突然背後の別の男が声をあげた。
「失礼いたしましたっ。私、NTTコミュニケーションズバリューパートナー、××通信の○○と申します! このたびは、よろしくお願いいたします!!」
 男が差し出した名刺は、なにやらインクジェットプリンタで印刷したような雰囲気で、NTTのロゴがべたべたと並んでいた。
 へえ、NTTコムの人なの?
「いえ、私どもはNTTコミュニケーションズの子会社でして、NTTに代わりまして工事を担当させていただいている者です。それで、電話のIP化はすでに決定していることで、工事も必ず必要なのですが、まずそのご同意をいただいて、その後……」」
 ちなみに、バリューパートナーというのは単なる代理店のことである。
 そんな言葉で説明されてもわからないから、文書を見せてください。趣旨を明記した文書くらいあるでしょう。
「数日前にポストに青い紙を入れさせていただいたので、ご覧いただいているはずですが」
 チラシは全部捨ててます。とにかく、口頭の説明には一切同意しません。しかるべき文書を書留なりで送れば一応読みますが、契約は一切しません。
 これで、彼らは帰っていった。時間があれば、社会勉強のためにももう少し付き合ったんだけど。
 最近、こうした通信系詐欺や詐欺まがい業者がとにかく多い。
「回線のデジタル化工事」「マイラインの登録について」と言われたら、即断ろう。

コメント

  1. 私は、その『消化器を買ってしまった』おおバカ者です(汗;
    その夜は、家族中にバカにされました。4万円と言われ、無いといったら、1万8000円になりました。確かに変ですね。東京電力の人のような格好をしていたので信用してしまいましたm(__)m

  2. かんりにん より:

    HANAHANAさん、ご愁傷さまです……。
    僕は、大学の頃消化器詐欺を扱ったショートドラマを作ったことあります。
    「消防署の方から来た」とか言うんですよね(^^;。

  3. そうなんです。一瞬は、まあ通常の受け答えとして、『消防署の人ですか?』と聞きましたが、『委託を受けてます。江東区・葛飾区、それと北関東担当になってます。』と、名刺を渡されました。読まずに信用・・・オオバカものです。そんな担当あるわけ無い。笑い飛ばして、まあ、1台あってもいいよ。と話が終わったウチの家族も変でしたね。
    『大統領の理髪師』は、みたいんですよね。
    ソン・ガンホという俳優も好きですから。