「ちょっといいですか。実は、デジカメをなくしてしまったんです」
引き続き博多のカプセルホテル。ロビー横のネットコーナーでメールをチェックしていたら、先ほどの韓国人グループのひとりが話しかけてきた。それは大変だ。
「たぶん、9時くらいに天神で忘れたと思うんですけど……。はっきり覚えてなくて」
忘れた場所と時間がはっきりしないが、とにかく警察に届けることにした。すでに0時を過ぎている。夜の繁華街で忘れたデジカメが、出てくるとは思えなかったが。
「えー、天神で忘れたんですか。そのデジカメというのは、どういったものですか。メーカーとか、色とか」
無人の博多駅筑紫口交番。電話で警察官に事情を話し、数分待たされた後にこんな返事が返ってきた。
デジカメの忘れ物が届いているらしい。ニコンのクールピクス2100、黄色いソフトケースに入っている、と伝えた。電話の向こうで、どこかに照会している声が聞こえた後。
「えー…… あのですね、天神の交番に、それとよく似たものが届いているそうです。これから電話を天神交番にまわすので、直接話してもらえますか」
キタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!!!!
おっといけない。
「よく似たもの」というのは警察用語で、「全く仰るとおりのもの」という意味だ。つまり、「それ、届いてますよ」ということ。意地の悪い僕は、わざと表情や口調を変えず、はい、はい、そうですか、ではこれから伺います、と伝えて電話を切った。ふうっとため息をついて、おもむろにデソクの方を向く。
ニッと笑って、親指を立ててみた。
「!!!」
抱きつかれました。
タクシーで西鉄福岡駅構内の天神交番へ行き、学生のような女性警官にもう一度事情を話した。間違いないだろうということだったが、お役所らしくまずは遺失物届を提出する。僕が日本語で代筆していると、奥から男性警察官も二人出てきて韓国談義が始まった。40代くらいの中年警察官は、つい先月、釜山へ遊びに行ったそうだ。
遺失物届を書き終えると、おもむろにデスクの下からデジカメが登場。デソクは大喜びで、中に入っている画像を再生した。1枚、2枚、3枚……なんだよ、ぜんぶ彼女とのツーショットじゃん。
「いやー、釜山で撮って、そのまま持ってきたんですよ! よかったー」
……助けてやるんじゃなかった。
コメント
>キタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!!!!
笑いました。
面白い経験でしたね!^^ 僕も笑いました。