【再録】列車で食べる、弁当とキンパプ

※この記事は2007年7月20日にスペースアルク「韓国まろん紀行」で発表したものです。
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列車の旅の楽しみといえば、駅弁。日本では、主な駅にはたいてい駅弁があり、その土地の味を競っている。

残念なことに、韓国には日本ほど多彩な駅弁文化はない。しかし、在来線の「セマウル号」や「ムグンファ号」に乗っていると、食事時にはたいてい弁当売りが来る。

「お食事でございます。この列車には、食堂車がございません……」

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この「旅行弁当」がおいしい。ほかほかのご飯にキムチや玉子焼きなど10種類以上のおかずが付き、生のコチュやコチュジャンまである。缶ビールを一緒に買って、移りゆく車窓の景色を眺めながらいただくと、旅はいちだんと楽しくなる。

「旅行弁当」だけでなく、「キンパプ(海苔巻き)」もある。こちらも具だくさんで、塩加減もちょうどよい。

この2つを食べ比べて、気づいたことがある。

「旅行弁当」のご飯は必ず温かいが、「キンパプ」のご飯は、やや冷めている。

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韓国では、冷たいご飯はほとんど食べない。保温技術が未熟だった時代でも、弁当は鉄製の容器に入れ、食べる直前に火にかけて温めた。そういえば、中国の人も、冷や飯は囚人が食べるものとして、まず食べない。これは、韓国と中国共通の文化だ。

一方キンパプは、近代に日本人が持ち込んだ巻き寿司の影響を受けているといわれる。こちらは、韓国でも冷めているのが当たり前だ。

これを、中国と日本の間に位置する韓国らしい現象と考えるのは、早計だろうか。

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さて、高速鉄道KTXにも、車内や駅で買える弁当がある。こちらはファミリーマートが販売しており、レンジで温める味噌汁も付く。プルコギを中心にしたおかずは、やはり盛りだくさんだが、ご飯もおかずも中途半端に冷めている。味もどこかレトルト感が漂い、在来線の「旅行弁当」ほどおいしくない。

韓国でも、“駅弁”は“コンビニ弁当”に浸食されて行くのだろうか。

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