コミュニティバス「旧なかのん」

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「それ、何ミリのレンズ? オリンパスいいねえ」

中野駅前から、関東バスの「旧なかのん」K01系統に乗ると、いきなり運転手に話しかけられた。

「僕もミラーレス持ってるんだ。昔はニコンのF3にモータードライブを付けて撮ってたけど、重くてね」

カメラが趣味らしい。運転手は、赤信号で停車するたびに、先頭の座席に座った僕に話しかけてきた。もちろん、バスが動いている間は運転に集中しており、親子連れに子ども運賃の特例を丁寧に説明するなど、仕事ぶりはまじめだ。

中野駅と、鷺宮・上鷺宮地区を結ぶコミュニティバス「旧なかのん」は、今月6日から若干増便した。

春に大幅減便を実施し、過疎地のローカルバスも真っ青の状態になっていた「旧なかのん」。上鷺宮地区の住民は、このバスがなければ区役所のある中心部に直接出ることができない。さすがに住民からの苦情が強かったらしく、4カ月余りでの再増便となった。とは言っても、増えたのは数本だけで、17時までだった終バスも30分繰り下げただけである。

「運転手さん、このバスは僕らにとって死活問題だから、なくさないでくださいよ」

僕のほうから話しかけると、運転手は苦笑いした。

「まあねえ。駅と駅を結ぶとか、大きな団地があるとかならともかく、新青梅街道にはそういったものが何もないからね。成り立たないんですよ」

路線バスとしては成り立たないからこそ、中野区がお金を出してコミュニティバスを開設したはずなのだが、中野区は3年間であっさり助成金を打ち切ってしまった。この辺りは都内でも有数の住宅密集地なのだが、どうも杉並区などに比べると、中野区は住民サービスが後手に回っているような気がする。

「うち(関東バス)だからなんとか続けていますけどね、鉄道会社のバスだったら、ちょっと無理でしょうね」

座席はさらりと埋まっており、乗車率は悪くないように見えるのだが、路線バスの運営もなかなか難しいようだ。