ノラ猫に餌をあげる人たち(2007/04)

アルクのサイトで連載していた、「韓国まろん紀行」。全69回分を、少しずつアップしていきます。

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仁川国際空港に近い空港新都市を歩いていたら、アジョッシ(おじさん)がノラ猫に鶏肉を食べさせていた。

韓国の猫も、ずいぶん地位が上がったものだ。

僕は、旅と韓国を主なテーマにしているフリーライター。子どものころから猫屋敷に住んでいたせいか、いつも道で出会った猫を観察している。僕が2001年に高麗大学に留学した当時、韓国では、猫はネズミ同然の存在だった。目つきが怖くて気持ち悪い、人になつかず、自分勝手……。ノラ猫のことを「泥棒猫(도둑고양이)」と表現するほどで、ノラ猫を見てかわいいと思う人など、全然いなかったものだ。

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それが、近年少しずつ変わりつつある。ソウルの梨大近辺には、毎晩ノラ猫に餌をあげるおばさんがいるし、犬一辺倒だったペットショップでも、猫を置く店が増えている。釜山では、最近「猫に“ご飯”あげないでください」という張り紙まで見かけた。

「3匹姉妹なんだよ。この時間になると、餌をもらいに来るのさ」

 アジョッシは、にこにこしながら鶏肉を投げ続けている。ちょびひげを付け、お世辞にもかわいいとは言えない猫たちだが、近所の人には親しまれているようだ。通りかかりの親子連れが、「あら、ニャンコよ」なんて言いながら車の下をのぞき込んでいた。

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人間に愛されずに生き抜いてきた韓国の猫たちは、野生動物らしい不敵な面構えが魅力だった。この分では、まるまる太ったかわいらしいノラ猫の登場も、遠い未来の話ではなさそうだ。

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この記事は、2007年4月に執筆したものです。