ひぐらしのなく頃に 出題編終了

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 5月から、少しずつ進めてきたサウンドノベル、「ひぐらしのなく頃に」。ようやく、出題編(「鬼隠し編」「綿流し編」「祟殺し編」「暇潰し編」)が終了した。

 「ひぐらしのなく頃に」シリーズは、岐阜県白川郷をモデルにした架空の村、鹿骨市雛見沢村を舞台に起こる、謎の連続怪死事件を軸としたJホラー・ミステリーで、元はコミックマーケットで発表された同人(アマチュア)ゲームだ。 

 シリーズを重ねるごとに人気を集め、プレイステーション2、テレビアニメ、コミック、実写映画、NintendoDSと、様々なメディアに進出した。

 舞台は、某県鹿骨市にある雛見沢村。かつては「鬼ヶ淵村」と呼ばれ、「人食い鬼の村」と恐れられた、人口2000人以下の小さな寒村である。

 昭和58年。主人公の前原圭一は、東京から雛見沢村に引っ越して来る。学校は、各学年が合同で授業を受ける、小さな分校。そこで圭一は、委員長の魅音、天然で可愛いものが大好きなレナ、生意気なお嬢様言葉を使い、トラップを仕掛ける名人の沙都子、愛らしいが不思議な雰囲気のある梨花などの仲間と出会い、楽しく、平和な毎日を過ごしていた。

 そんなある日、圭一は、この村で過去4年間、毎年同じ時期に発生した、不可解な事件の噂を聞く。軽い好奇心から、事件について調べようとするが、仲間たちは事件について語ろうとはしなかった。

 そして、村は「綿流し」と呼ばれる祭礼の日を迎える。過去4年間の事件は、すべてこの祭礼の日に発生していた。そして今年も、この「綿流し」を境に、平和な日常は一転。恐ろしい、悪夢のような日々が始まるのだった……。

   サウンドノベルとは、絵と文章、そして音で構成される、ビジュアル小説タイプのアドベンチャーゲームのこと。たいていは、物語を読み進めていくと選択肢が提示され、その選択によって物語が分岐していく。正しい選択をすればハッピーエンドへつながり、間違った選択をすれば、バッドエンド、あるいはゲームオーバーとなる。 

 こうしたゲームのユーザーは、すべての選択肢をたどって、全部の物語をたどるのが普通だ。純粋に物語を楽しむのではなく、分岐や、経由するエピソードをひとつひとつチェックし、コンプリートを目指す。そこで、この「ひぐらしのなく頃に」では、「物語が分岐するシステム」を放棄した。

   物語は、最初から最後まで、完全に一本道。通常のサウンドノベルで枝分かれしていく各エピソードは、「鬼隠し編」「綿流し編」といったように、ひとつひとつ独立した物語になっている。様々な可能性を、パラレルワールドのように見せる物語の集合体が、「ひぐらしのなく頃に」だ。   

 各物語は、大部分が平和な美少女恋愛ゲームの体裁をとっている。プレイヤーが登場人物に感情移入した頃に、突然物語が暗転し、不条理で恐ろしい世界に引きずり込まれる。発表当初は、書体や画面デザインも美少女ゲームの体裁をとっていたそうだ。その極端な展開と不覚入り組んだ「謎」に、口コミで人気が高まった。 

 そんな「ひぐらしのなく頃に」。僕が読了した4編は「出題編」と呼ばれる。謎はほとんど解明されないまま終わる。それどころか、主人公を含め、多くの登場人物が不条理な死を迎えたり、行方不明になったまま終わってしまう。

   出題編では、主人公はどこかで判断を誤ったということになっているらしい。後半の4編はタイトルを「ひぐらしのなく頃に解」と改め、出題編で提示された謎が次第に明らかになっていくそうだ。いわば種明かし編なので、その前にプレイヤーには自ら真相を推理することになる。 

 そうは言っても、この物語、通常の推理小説と異なり、推理がかなり難しい。真犯人は……と考えようとしても、まず「この物語の真犯人とは、何の犯人なのか」というところから考えなくてはならない。緻密に張り巡らされた伏線を見ていると、かなり綿密な謎解きが用意されているようにも思うし、昭和58年に「萌え」という言葉が出てくるような時代考証のいい加減さを考えると、「村の人々の思いが力となって奇跡を起こす」みたいな力業で解決してしまう気もする。

   万人受けするとは思えない絵柄や、ほとんどが文章で説明されるシンプルなシステムにもかかわらず、熱中度はかなり高い。これだけの作品を、アマチュアの作家が作ってしまうのだから、趣味の力はすごいなあ。

「ひぐらしのなく頃に」原作版は、最初のエピソードである「鬼隠し編」が、一本まるまる体験版として無料公開されている。もう何年も前の作品だが、興味のある方はぜひどうぞ。