銀座の踏切から築地市場へ

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 電通本社ビルの隣に眠る、踏切警報機。

 銀座に、ただ一つ残る踏切だ。といっても、ここに線路はない。かつて汐留駅(現在のシオサイト)から築地市場内の東京市場駅に入っていた貨物線の跡。1984年1月限りで貨物線は廃止されたが、この警報機だけが、地元の強い要望によって残された。

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 写真を撮っているのは、このブログにもよく登場する鉄道アーティストの小倉沙耶さん。3月で廃止される寝台特急「はやぶさ」の取材で東京に来たので、ご案内した。僕自身も、ここに来るのは十数年ぶりだ。

 この地に線路が敷かれたのは、築地市場が開設された、1935(昭和10)年のこと。汐留貨物駅の奥から1.1 kmの線路が延び、市場に入っていた。

1974(昭和49)年当時の空中写真はこちら

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 築地市場は、上空から見るとバームクーヘンのようなカーブを描いているが、このカーブの一番外側(GoogleMAP上、赤い屋根の外側)に線路があった。毎日、生鮮食料品を満載した貨物列車が全国から築地市場へ直通していたそうだ。

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東京都事業所の建物の右、斜めの屋根がある所に線路が入っていた

 しかし、物流の主役が鉄道からトラックへと移ると貨物列車は次第に減り、1984(昭和59)年1月31日を最後に、貨物線は廃止された。

 現在、築地市場の豊洲移転問題が議論されているが、築地から市場を移転させる理由の一つが、この鉄道を前提とした構造にあると言われている。トラックの駐車スペースが、絶対的に足りないのだそうだ。

 築地市場の入口まで歩いた後、場外市場を訪ねてみた。日曜日とあって、観光客は多いが、開いている店は少なかった。

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 懐かしい雰囲気の漂う場外市場。しかし、歩いてみると老朽化は隠せない。心情的には、築地に残ってくれれば、と思うのだが……。