PSP「涼宮ハルヒの約束」

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 仕事の合間や、明け方寝るときにちょろちょろと進めていた、「涼宮ハルヒの約束」。どうやら、大部分のエンディングをクリアしたようだ。一大ブームを巻き起こしたライトノベル&アニメシリーズ「涼宮ハルヒシリーズ」のプレイステーションポータブル用ゲームだ。

 てっきりギャルゲーだと思って無関心だったのだが、どこかで「これなんて『ビュー×ィ×ルド×ーマー』?」という記述を見て興味をひかれ、仕事の合間にやってみた。ちなみに、アニメは一応一通り見た。

 文化祭を目前に控え、主人公の高校一年生キョン(=プレイヤー。あだ名で、本名は不詳)は、涼宮ハルヒら"SOS団"のメンバーで撮影した自主制作映画「朝比奈ミクルの冒険EPISODE00」の編集作業に取り組んでいた。「超監督」涼宮ハルヒの指示のもと、連日部室で徹夜を続けていたキョンだったが、気がつくとすでに文化祭前日の朝。顔を洗いに外に出ると、校内は文化祭前日特有のあわただしい雰囲気に包まれていた。そこには、いつものようにハルヒや朝比奈さん、長門、古泉、鶴屋さんといった面々がいたが、しかし彼らと会うたびに、キョンは奇妙な「既視感」にとらわれる。そして、学校に起きている異変が、徐々に明らかになっていく……。果たして、キョンは無事映画を完成させ、文化祭当日を迎えることができるのだろうか。

 ゲームは、シンプルな選択型アドベンチャーゲーム。朝、昼、午後、夜と、学校のMAP上で行く場所を選択すると、それに合わせて物語が分岐していく。主人公のモノローグと、登場人物との会話によって話が進み、台詞は主人公を含めて、アニメ版の声優によるフルボイス。つまり、すべての台詞に音声が付いている。小説で言う"地の文"もキョンのモノローグであるから、ひたすらキョンが喋っているわけだ。ストーリーは途中から10種類くらいに分岐していくので、単純に言って小説5冊分くらいの分量があったはず。声優の皆さん、特にキョン役の杉田智和氏はお疲れさまである。

 時々、「S.O.S会話」という会話イベントが発生する。ここではプレイヤー自ら話題を選び、それによって相手の印象が良くなったりしらけたり、時にドキドキしたりする(笑)。相手の気分を盛り上げたり、鍵となる話題に言及して会話を終わらせればストーリーが進む。しらけた雰囲気で終わらせると、先に進めなかったり失敗ストーリーに入ったりする。厳密にはもう少し複雑だけど、まあそんな感じのシステムだ。

 で、感想。結論から言うと、かなり面白かった。

 この手のゲームは、原作から逸脱したパラレルワールド的なストーリーが多いが、これは後付けにしては巧く原作の流れにはめ込んでいる。アニメなり小説なりの原作を知っていないと、よく分からないであろうところも多かったが、一応アニメは押さえてあるので問題なし。

 ハルヒシリーズというと、「ハルヒ萌え」「長門は俺の嫁」といったキャラ萌えのイメージが強いが、実際には様々なSF要素、他作品へのオマージュ&パロディが鏤められた、かなり練り込まれた物語である。

 不思議なもので、ひたすら喋るキョンの話を聞いていると、だんだん友だちの愚痴を聞いている気分になってくる。この、主人公が妙に冷めていて、突き放して世界を見ている辺りが、ポイントなんだろう。やたらとアツい人間、たとえば涼宮ハルヒの視点で描かれていたら、とっくに疲れ果てて投げ出していたに違いない。そうそう、僕にとっては、この「キョン」という名前もポイントだ。他人のような気がしない。

 そして、安直な恋愛話ではないのが良かった。いや、そういう部分も多少あるのだが、基本は「仲間」の物語だ。僕は、やっぱりそういうのが好きらしい。

 でも、正直難しかった。ストーリーは、「I」から「VII」まで7章あるが、IIからIIIに行くのが特に難しい。失敗すると、同じ章を繰り返しとなり、一定回数繰り返すと、自動的にゲームオーバーになってしまうのだ。どうやればIIIに進めるのかわからず、何度ゲームオーバーになったことか。無意識のうちに好みの人物にばかり話しかけていて、それが先に進めない原因だったようだ。

 最低限、アニメを見ておかないと意味不明の部分が多いだろうが、小説なりアニメなり、原作を見たことのある人ならやってみて損はないゲームである。

 じゃあ、次は「コード×アス」ですかね。いやいや、こっちは原作見てないから。