お宝グッズ

 土曜日。Sさんと、韓国語レッスンの日。中野のカフェで勉強を済ませた後、中野ブロードウェイを案内した。地元の有名スポットだが、「おたく」とはおそらく無縁と思われる僕は、「まんだらけ」などのサブカルショップをじっくり見てまわったことはほとんどない。僕にとっても、有意義な1日になりそうだった。

 アイドルタレントグッズの専門店「TRIO」に入ったときのことである。

 ずらりと並ぶ、週刊テレビガイドのバックナンバー。本田美奈子の表紙を見て切なくなったりするうちに、ひらめいた。
 もしかして、テレビ情報誌はみんなそろってる?

 それまで、極めて冷静に友人を案内していた僕だったが、突然何かに憑かれたかのように書棚を漁り始めた。ザ・テレビジョン、TVbros、テレビぴあ……。

 NHKウィークリー「ステラ」。これだ。この棚の中に、きっとあれがあるに違いない。

 Sさんの存在も忘れて、ガサガサとビニール包装をめくる。果たしてそれは、あった。

NHKウィークリー「ステラ」2003年9月27日~10月3日号
特集「新・連続テレビ小説てるてる家族」。

 どきどきした。いったいいくらだ、2000円までは出そう。値札を見ると、「210円」。安すぎる。直ちに他の号もひとつひとつ確認し、表紙に「てるてる家族」と書かれた号はすべて抜き出した。ぜんぶ買っても2000円足らず。迷わずレジに走った。ガンダムにも、アイドルにも、ゲームにも大してはまらず、おたく道とは無縁と思っていた僕だが、こんなところにマニア心が潜んでいた。

 だが、運命の出会いは、これだけでは終わらなかった。

 それは、ブロードウェイの総本山、「まんだらけ」本店のショーケースを眺めていたときに発見した。手に入るはずのない、そのグッズ。詳しくは書けないが、お宝度は藤子不二雄の処女作「ユートピア最後の世界大戦」に匹敵する(当者比)。

「あの、これ、よく出るんですか?」
「いや、これは今回初めてお出ししたものですね」

 まんだらけのショーケースなんて、今まで全然気にもとめなかった。それが、たまたま今日Sさんを案内したことで目に止まり、初めて売りに出された、このグッズと出会った。まさに、運命の出会いである。

「あるもの、ぜんぶください」

 値段は、全く関係なかった。思いのほか安かったが、多分倍の値段でもためらわずに買っただろう。そうか、「激レアグッズ」を発見した人は、こういう気持ちになるのか。初めておたくな人たちの心が分かった気がした、土曜日の午後だった。