メディアは世論を誘導する?

  週刊アスキーの連載コラム「今週のデジゴト」。筆者の山崎浩一氏は、韓国、あるいは朝日新聞などのメディアに批判的な意見を持っているようだ。今週号(4月18日号)でも、日本のWBC優勝を、韓国のメディアが「憂慮していたことが現実になった」と報じたという、ブログの記事を引用し、批判的にコメントしている。

 日本のメディアが「韓国も日本の優勝を祝福」などと日韓友好を必死に演出しても、今やこのようなブログで簡単に"現実"を知ることができる。

 首をひねった。「韓国も日本の優勝を祝福した」という、"日韓友好を演出した"報道は、見た記憶がない。むしろ、「韓国では、日本の優勝を"きまりの悪い成績"と悔しさをにじませて報道」などと、ライバル心をみなぎらせた報道が多かった。

 なぜ日本のメディアは事実や現実を隠すようなことまでして、日韓友好ムードを演出し続けるのだろうか?

 山崎氏はこう問いかけ、その背景に「メディアは世論を誘導すべきである。なぜなら大衆は愚かで啓蒙されるべきだから。それは事実を報道することよりも優先されるべき」という意識が潜んでいると指摘する。

 世論を誘導することと、日韓友好ムードを演出することがどう結びつくのか、僕にはよくわからない。「大衆が愚かだ」から「日韓友好ムードを演出する」というのは、無理がある。

 もしかしたら、山崎氏には先入観があるのではないだろうか。すなわち、「朝日新聞などの左派系メディアは、現実を隠蔽し韓国・中国におもねる世論誘導をする」、「メディアには第4の権力というおごりがある」という先入観だ。

 たしかに今、ネット世代を中心に、こうした先入観、思考停止が横行しているように思う。それは、「メディアは信用できない」というイメージを作り、「信用できるのはむしろネットの発言だ」という意識を生む。

 山崎氏は、冒頭のブログを指して、「今やこのようなブログで簡単に"現実"を知ることができる」と言う。さらに、「韓国メディアの公式サイト、韓国人のブログ、NAVERの掲示板などを覗けば、もっとナマナマしい現実も知ることができる」、「新聞を読むよりネットで検索すればいい」とまで言っている。

 しかし、ネットを検索していろいろ読んでも、事実は簡単にはわからない。外国人が、「日本人の考え方は、日本人のブログや2ちゃんねるを覗けばわかる」と言ったら、日本人は「見方が一面的だ」と思うだろう。ネットの記事は、さまざまな人が自由に書いているだけに、そこから事実を読み取るのは新聞を読む以上に難しい。

 韓国が、WBCの日本優勝を「恥ずかしい優勝」と報じたことは事実だ。日本の"ネチズン"は、やっぱり韓国はけしからん、反日の国だと怒る。では、今韓国に反日意識が渦巻き、在韓の日本人が身を隠すように暮らしているかと言えば、そういうことは全然ない。「やっぱり日本の野球は強いねえ、でも、もうウリナラも実力じゃ負けないよ、次は絶対勝つよ」くらいのもので、今日もソウルのあちこちで、韓国人と日本人は仲良く酒を酌み交わしている。

 新聞をうのみにする人もどうかと思うが、ネットの記事をうのみにし、先入観を持つのもおかしなことだ。

コメント

  1. 最近私がもやもや思っていたことを
    はっきりと文章にしてもらった感じです。
    さすが文豪ですな。
    同じ事を感じてました。
    朝日新聞と別の新聞二つとも読んでますが
    ネットで朝日を叩く人は実際に毎朝
    読んだりしているんだろうか?と不思議です。
    韓国のネットを見て、それが全てだと思う
    日本2ちゃんねらーは自分がネットに洗脳
    されていることも気がついて無いと思うんです。
    私が良く韓国にいた時に文句言いながら
    「どうして韓国人は井の中の蛙なの!」って
    悲しいけど日本も韓国も同じだ。って感じました
    きっとこの作者の記事を鵜呑みにする人
    良く言った!という人は多いと思います。
    それをここまで論理的にすらっと言える。
    さすがです。
    PS韓国行き決まったら教えてください

  2. 通りすがる より:

    私は韓国在住3年目になります。
    今回、日本で、韓国内のムードをある程度正確に報道したWBCは画期的でした(それでもまだまだ遠慮がちに報道のようでしたが)
    >「やっぱり日本の野球は強いねえ、でも、もうウリナラも実力じゃ負けないよ、次は絶対勝つよ」
    どこから、このような暢気な言句がでてくるのでしょうか。現実にはこんな甘いものではなく、日本に対する凄まじい誹謗中傷が飛び交っていたのが、総体的な韓国のムードとみるべきです。WBC期間中はあらゆるシーンで不快な思いをしました。国の総力を挙げての日本への誹謗中傷は、スポーツと国威掲揚をごっちゃになって考えるこの民族の特徴が顕著に表れていました。
    私が常々思うのは、「住む」のと、「通う」のでは韓国の見え方が全然違うということです。韓民族は客をもてなすことを得意としているため、ソウルによく来る日本人は妙に韓国に対して不条理なほど好意的に捉える方が多いと感じています。
    先入観、思考停止なのは貴方のほうではないかと思います。

  3. かんりにん より:

    通りすがりの方、こんにちは。
    ご存じではないのだと思いますが、僕も韓国に3年ほど住んでおりました。うめぼしこんぶも、2年ほどソウルに住んでおり、その上での感想です。
    僕がソウルにいる間、2002年ワールドカップやソルトレイク五輪を含め、幾多のスポーツイベント、そして韓日戦を現地で見ています。その上で、「日本に対する凄まじい誹謗中傷」が、メディアやネットで飛び交っていても、僕自身が直接不快な目に遭うことは、ほとんどありませんでしたし、日本人とバレたら石を投げられる、といった経験は全くしておりません。
    ワールドカップの時、日本の対戦相手が得点を入れると大喜び、ということがありました。それを見て、ぷんぷん怒っている日本人留学生も大勢いましたが、僕はそういう状況の飲み屋でテーブルに立ち上がり、「ニッポン」コールをやりました。
    そんな状況でニッポンコールをやったら、危険な目に遭うのか?と言えばそういうことは全くありません。「おっ、日本人もいるのか」ということで、今度は店内にニッポンコールが巻き起こったのです。日本-ベルギー戦、安岩洞のCASSホプでのできごとです。
    おそらく、性格にもよるはずです。「日本はケシカラン」と言われると、自分が直接言われたように感じ、癪に触ってしまう人も多いと思います。そういう方は、例えば普段の生活で直接被害を受けなくても、ニュースなどを見る度に、「あらゆるシーンで不快な思い」をしてしまうかもしれません。僕は、なんでも突き放して考える癖がついており、不当な日本批判を聞いた場合、反論は必ずしますが、自分のこととして不快に思うことはありません。
    >> 私が常々思うのは、「住む」のと、「通う」のでは韓国の見え方が全然違うということです。
    まったく仰る通りです。住むと、いろいろな韓国の嫌な面が見えて、呆れたり、嫌いになったりします。しかし、そう言う状況を受け入れ、ある程度突き放して考えることができるようになると、再び韓国の人たちの良い面も見えてきます。今の僕の韓国観は、黒田勝弘さんの言葉を借りますが、「好きだったり嫌いだったり、いろいろです」。
    お仕事で韓国にいらっしゃるのでしょうか。
    苦労される面も多いと思います。お身体にお気をつけください。

  4. 通りすがる より:

    ご丁寧なレスをありがとうございます。
    W杯の際、日本において、共同開催国として日本も韓国を応援し、韓国も日本を応援していたかのような報道ばかりでした。その時、私は韓国にはおりませんでしたが、在韓日本人の方の話を聞くと、その報道(友好的雰囲気)がまったくのデタラメであったことを知りました。その事実をネットで知って愕然とした日本人も多いことでしょう。
    今回のWBCで、韓国内の日本への誹謗中傷で満ち溢れた雰囲気も、どうせ日本のマスメディアによって歪曲されるのだろうと思っていましたが、誹謗中傷していることを「ある程度」伝えたことを知り、「画期的」だと私は評価しております。
    昨今の韓流ブームで安易に韓国に遊学してしまった日本人がそのイメージと現実とのギャップに絶望し、韓国に耐えられなくなり帰国してしまうケースを目の当たりにしてきました。韓国を歪曲美化してきた日本メディアの犠牲者とでも呼ぶべきでしょうか。
    それと、W杯は日本とは直接対決してませんが、今回は直接対決です。辛辣さの度合いが違うようです。
    口々に「イチローの犬野郎!」、(日本が負けて)「ザマーミロ!」と絶叫している。テレビをつければ、日本に勝ったシーン、あるいは神聖なマウンドに太極旗を突き刺しているシーンを永遠に繰り返し流されている。挙句の果てに、王監督は八百長疑惑のある本塁打王だ。とわけの分からない方向に暴走しだす。
    この状況で「不快」に思わない在韓日本人がいるならば、それはすでに日本人ではありません。産経の黒田さんは「疲れた」と表現しておりましたが、私の場合は、不愉快だったり、頭にきたり、呆れるたりの連続で本当にぐったりになりました。
    私も韓国での美談の類いはそれなりに持ち合わせておりますが、やはり最大公約数として韓国は反日国家と見るべきでしょう。親日では無いことは確かです(笑) もっと言葉を絞れば、日本に異常につきまとい、勝手に対抗心を燃やす、「ストーカー」というべきかもしれません。
    おっしゃる通り、ネット世代、つまり若い世代は圧倒的に嫌韓指向が強いようです。ここで思うことは、「火の無いところに煙は立たない」ということです。事実、ダイレクトに韓国の情報を取ると、善良な日本人に嫌悪感を抱かせるに十二分な国だというこでしょう。
    ネットの韓国情報が全てではないという声を良く聞きます。しかし、ネットに溢れている韓国情報は主に韓国の新聞の日本語訳を根源としています。新聞以上に韓国という国をを知る手段がありましょうか? 貴方が思っている韓国と私が思っている韓国が違うように、そんなこといったら誰の、何の、韓国情報が「正しい」のかわかりません。
    新聞以上にその国を知る上で公正かつ最大公約数を網羅しているものはありません。
    日本に対する常軌を逸した対抗心や不条理や捏造、身勝手な思考性向、誇大妄想、被害妄想・・・。韓国という国は善良な日本人を嫌韓に追いやる要素をフンダンに持ち合わせているのが「現実」です。
    自虐歴史教育の欺瞞の露見とも相絡まり、ネット人口の拡大に比例して増加拡散の一途を辿る若い世代の嫌韓感情。それの大きな要因の一つが、日本のテレビ、新聞から入ってくる韓国と、ネットを通じてダイレクトに入ってくる韓国とのギャップです。
    一度芽生えた嫌韓感情はそうそう消えるものではありません。ネット世代が日本の表舞台に立ち、正確公平な韓国像が日本で大手を振って伝えられるようになる時から、ようやく初めて「正常」な日韓関係が築けるのかもしれません。
    いずれにせよ、今回のWBCで日本のメディアが韓国内の雰囲気を報道したのは大きな進歩だと思います。

  5. かんりにん より:

     ご意見は伺いました。エントリの趣旨から離れているので、手短に。
     指摘しておきたいのは、僕が「韓国は反日国家ではない。ネットに横行する嫌韓の人たちの言っていることは全て間違いだ」とは言っていないということです。韓国が、国として反日であることは全く否定しませんし、日本に対する批判に非礼なものや、事実誤認が多いことも事実です。僕が言っているのは、それは一面である、ということです(すぎない、という言い方もしませんので念のため)。他にも誤解をされている点がいくつかあるようです。
     さて、日本のテレビ、新聞から入ってくる韓国と、ネットを通じて入ってくる韓国、現地に居住し、個人で付き合って感じる韓国。これらがすべて異なるのは、どうしてなんでしょうか。
     この韓国情報が正しい。そういうものがあったら、楽ですよね。日本における韓国に関する報道が、友好的なものに偏っていれば、韓国における日本の報道は非友好的なものが多数を占めています。「最大公約数を網羅している」新聞が、ある時はどうしようもな偏見や間違いを語り、ある時はナショナリズムを煽る。またある時は、一面だけ取り上げて褒めたり貶したりするのです。日本の新聞は信用できなくて、韓国の新聞の日本語訳から仕入れた情報はダイレクトな情報だとは、僕は思いません。
     では、どうすればいいのかは、僕が偉そうに述べることではありません。言えるのは、僕自身はどうしているのか、ということくらいです。
    「あなたは善良な私を完全に理解しなさい。あなたが私を誤解することは許しません。あなたが私を完全に理解して、初めてあなたと付き合います」。
     僕は、こういう立場には立っていないということです。
     最後にひとつ。今回、「韓国も日本の優勝を祝福」みたいな報道がなかったことは進歩だと思います。しかし、「日本の優勝を悔しさをにじませて報道」といった感情的な伝え方は、退化だと考えています。これじゃ、韓国の反日報道と変わらないではないか、と。
     汝矣島の桜はそろそろ散った頃でしょうか。お仕事がんばってください。

  6. たなか より:

    >その時、私は韓国にはおりませんでしたが、在韓日本人の方の話を聞くと、その報道(友好的雰囲気)がまったくのデタラメであったことを知りました。その事実をネットで知って愕然とした日本人も多いことでしょう。
    そのときいなかったのは事実かもしれないけど、それ以外の時には韓国にいたのかなぁ、このお方。韓国にいた実体験のエピソード、1つも書いていないよね。不思議。
    もしいたのだとしたら、うまく地元の人とコミュニケーションとれていないのかもね、と思いました。
    あるいは、韓国に行ったこともないのにただ否定したい嫌韓のお方なのかな。そうかも。
    ・・・と思ってしまいました。
    なんかみっともない。

  7. かんりにん より:

    たなかさん、こんにちは。
    通りすがるさんの意見は僕とは大きくことなりますし、
    見識についてどうかと思う点もあるのですが、
    現在韓国にいらっしゃるのは間違いないようです。
    例えば、ですが、もともと韓国に良くない印象を持っていて、業務でやむをえず
    韓国に住んでいたりすると、なかなか辛いかもしれません。