宗廟祭礼

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 毎年、5月の第一日曜日は宗廟祭礼。五大王宮のひとつに数えられる宗廟で行われる祭礼で、朝鮮王朝(李氏朝鮮:1392-1910)の国王の子孫が一堂に会し、宗廟に眠る歴代国王の霊を祀る。ほかの多くの伝統行事が、時代考証に基づいた再現公演にすぎないのに対し、宗廟祭礼は、実際に王族の子孫たちが集まる、本物の祭礼だ。約100年前に滅亡した朝鮮王朝の息吹が、今もはっきりと残っているというわけ。かつては年三回行われていたが、現在では一回のみ。それだけに、この行事を見ることができた観光客は、ものすごくラッキーだ。
 去年に続いて、今年も見に行ってきた。
 去年は、午前中に行われる永寧殿の祭礼を見たが、そちらは正殿よりひとまわり小さな廟だった。すぐ近くで祭礼を見られるのは良いが、狭すぎて身動きがとれず、かえって見づらい。正殿は広々としており、人は永寧殿よりずっと多いが、余裕を持って見られた。はじめて行くなら、やはり正殿のほうが良いだろう。
 雅楽を思わせる祭礼音楽は、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されている。宗廟自体が世界文化遺産であり、ソウルでももっとも文化的価値のある伝統行事のひとつと言える。うるさい解説放送もなく、場内には厳かな雰囲気が漂う。
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 手前の、紫の衣装を着た人たちは、よく見ると若い女の子たちだ。みごとな演奏だったが、ひととおり終われば、その表情は現代の女子学生そのもの。聞けば、ソウル芸術大学の国楽科の学生たちだそうである。
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行事が終われば、今どきの学生の姿に
 祭礼が終わると、やがて王族の子孫たちがぞろぞろと正殿から出てきた。今日だけは王族の姿をしているが、もちろん、普段は韓国の一市民である。だから、こんな姿も当然あるわけだ。
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 携帯を使う王様は、なんとなく様にならない。
 宗廟祭礼は、毎年五月の第一日曜日、11:30から行われている。