ブルートレイン「あさかぜ」

 ブルートレインに乗りたくて、何年も貯金した。

 お年玉は一切使わず、毎月700円の小遣いもほとんど全額貯金箱に入れた。

 そして、とうとう買った1枚のきっぷ。

「8月3日 あさかぜ1号 B寝台 東京→博多」。

 それは、銀河鉄道のきっぷに等しかった。

 夢にまで見たブルートレイン。その列車に、ついに明日乗るんだという1982年8月2日未明。

 国鉄東海道本線富士川橋りょうが、流失した。

 原因は、台風10号による集中豪雨。

 ブルートレインは、翌日から全便運休となった。

 泣いた。

 小学5年生の夏休みだった。

 僕が、晴れて「あさかぜ1号」に乗車したのは、1年後のことである。

 今日、その「あさかぜ」と「さくら」が、49年の歴史に幕を閉じた。

 ブルートレインがなかったら、今こうして旅を仕事にすることもなかっただろう。ほんとうに、お疲れさまでした。

コメント

  1. たなか より:

    寝台特急とか、長距離バスとか、飛行機より船
    旅の方が好き、とか(あぁ、僕って、案外乗り
    物マニアなんだなぁ)と思うことがあります。
    寝台特急の旅も、時間がどうにでもなるくらい
    あった若い頃ならともかく、組織のしがらみに
    身を寄せる立場となると、横目で見過ごすしか
    ないのが悲しい。
    電子辞書は検索ができて簡単に調べたいことが
    わかる、けど、調べたいことしかわからないの
    がつまらない、とも思うんですよね。ふとした
    ところで、意外な扉が開く面白さがなくなっていく。
    英和辞典で、peopleを調べようとしてpeepingTom
    を見つけた私の悩みは、意外な扉が開いたまま、
    なかなか閉まらないことです。