素晴らしきニッポンのカーナビ

 荷物を運ぶため、レンタカーを借りた。今時のレンタカーは、マーチクラスでもカーナビが付いている。生まれて初めてのカーナビ。走り慣れた道だったが、面白いので使ってみることにした。
 赤羽から中野へ行く場合、北本通りから神谷陸橋で環七に出て、板橋本町から山手通りを経由して早稲田通りに出るのが定番コース。昼間は渋滞することも多いが、夜なら概ね快適だ。所要時間も、30分くらいだろう。
 赤羽で荷物を積み込み、目的地に中野区新井1丁目付近を指定して出発。
 北本通りを1kmちょっと走り、環七の神谷陸橋交差点に来た。ここで右折……しない。カーナビは直進を示したままである。これには意表をつかれた。なるほどカーナビとは賢いものだ。渋滞しがちなコースは避け、うまく抜け道を教えてくれるというわけだ。そのときである。カーナビが、しゃべった。
「およそ、1km先、右方向です」
 ……? これはどういうことだろう。右方向に、何があるというのか。
 仰せの通り1km進むと、王子駅前に出た。大量のタクシーが集結し、夜中というのに渋滞気味だ。環七経由なら、そろそろ板橋本町を通過するころだろう。王子と板橋では、板橋のほうが中野に近い気がする。僕は、いまだに北区内だ。カーナビが、口を開いた。
「まもなく、右方向です」
 カーナビの発言をもとに、周囲の状況から総合的に判断すると、もうすぐ右折するべき交差点に到着するので、右折の準備をするべきであるという推測が成り立つ。それならはっきり「まもなく右折です」と言うべきだ。「うせつ」「させつ」が聞き取りにくいなら、「まもなく、右に曲がります」くらいは言ってほしい。まったく、最近の若者は日本語がなっていない。
 カーナビは、飛鳥山公園前を右折し、明治通りを池袋方面へ行くよう命令してきた。このまま行くと、絶望的な渋滞地域の池袋駅前ではないか。いったい、どんな奥の手を用意しているのだろう。
「およそ、2km先、渋滞です」
_| ̄|○  アタリマエデショ……。
 カーナビは、妙に勝ち誇った態度である。そうこうするうちに車は池袋駅前に突入、風俗街の大渋滞に巻き込まれた。忘年会でよっぱらった人たちが次々と行く手を遮る。
「まもなく、左方向です。その先、右方向です。その後も分岐が続きます」
 意味がわかんないんですけど。
 カーナビ様の命令にしたがってハンドルを切るというゲームを楽しみ、機械とのインタラクティブな会話機能を堪能していると、椎名町手前で山手通りに出た。これなら、最初から山手通り経由のほうがずっと速かったはずである。さすがは日本の最新テクノロジーだ。普段車を運転しない僕に、運転の楽しさをたっぷり楽しませようと言う趣向だったに違いない。
 疲れたので、寝る。

コメント

  1. すがじ より:

    カーナビは観たことも触ったこともない私ですが、これって便利なようでいてイラついているときなどは小突き倒してやりたくなる代物ではないかと思うのですよ。話は横道にそれますが方言バージョンがあるそうです。山形弁だとどんな風になっちまうんでしょ?
    可笑しくて運転どころではなくなりそう。それはまずい。

  2. TKSY より:

    カーナビは僕もレンタカーでしか使ったことないです。
    でもやっぱりツメが甘くて、地図見ちゃいますけど。我々のギョーカイの人は地図見るの早いですから(どんなギョーカイだか)。
    まぁ16時過ぎて、ダラダラ走るときには使いますけどね。

  3. かんりにん より:

    知らない所に行く時は、それなりに便利なんだとは思いますが、僕は機械に使われているようで楽しくなかったですわ。地図も、紙のほうが使いやすく感じたし。
    >>すがじさん
    「ナビやるべ」「この道、なんがいぐねぇ?」
    ってなかんじですか。え、樹里タソ見過ぎですか。そうですか。

  4. あるきもの より:

    こんばんは。
    走られたコースが全部うちの近所なので、拝見していて臨場感抜群でした。思わず通算二度目のコメントを書き込ませて頂きました。(笑)

  5. かんりにん より:

    あるきものさん、コメントありがとうございます。
    文京区かいわいにお住まいですか?
    結局、翌日カーナビに逆らって山手通り→環七と走ってみたら、カーナビさまの到着予定時刻よりも10分早く着きましたw。

  6. あるきもの より:

    うちは北区なのです。
    神谷陸橋〜飛鳥山など、もう庭のような環境だったもので。(笑)