水仁線廃線跡を歩く~漢陽大前駅編

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▲鉄道博物館に保存されている水仁線の客車

 かつて、京畿道の水原と仁川を結ぶ、軽便鉄道があった。全長52kmのこの路線は、韓国では数少ないナローゲージ(762mm)の軽便鉄道だったので、日本の鉄道ファンの間で人気がある。かつては、京畿道でとれた塩や米を仁川港に運ぶ役割を果たしていたが、次第に利用客が減少、1995年12月31日限りで全線廃止された。

 水仁線は、最後は1日に列車が3本しかない超ローカル線だったが、沿線は現在ソウルのベッドタウンとして急速に発展している。10年近く前に廃止された鉄道の痕跡なんて、ほとんど消えてしまっているだろう……と思っていたら、そうではなかった。

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 地下鉄4号線が乗り入れる、国鉄安山線の電車が漢陽大前駅に近づくと、南から草むした路盤が近づいてきた。築堤の跡だけでなく、幅の狭いレールもそのままだ。漢陽大前駅は、水仁線が最後に廃止されたときの終着駅で、その時にはすでに京仁線も開通していた。その漢陽大前駅には、荒れてはいるものの、水仁線のホームからレールまで、ほとんどの施設が残っていた。

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 漢陽大前駅。階段を下りた、手前のスペースが旧水仁線のホーム。きれいなタイルが敷かれ、さほど古いホームではないことを物語る。

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 ポイントを切り替える転轍機

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 駅の近くには、踏切も残っており、地元中学生の通り道になっていた。京仁線の高架線と、真新しいマンション群に囲まれた安山新都市。だが、そのふたつに挟まれたわずかなスペースに、忘れ去られたかのように畑と軽便鉄道の路盤が残っていた。

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 なぜ、このような形で路盤と畑が「保存」されているいるのか。それは、近い将来、旧水仁線のルートに、新しい水仁電鉄線を建設する計画があるからだろう。本格的な建設工事が始まれば、この路盤も畑も、あっという間に消えてしまうに違いない。

 続く。