南大門で眼鏡を作る

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 もとこさんと南大門市場へ。行きつけのJ眼鏡店で眼鏡を新調した。
 今日はなじみの社長が休みで、女性の店員が相手をしてくれた。この店は、眼鏡の相場について取材したこともあり、ぼったくらないのはわかっている。検眼をしてから、「自然な感じのフレーム」をいくつか見せてもらった。どれも四角く小ぶりなフレームで、真面目に見えそうな雰囲気だ。だが、こういうものを選ぶのが苦手な僕には、「これ!」というのがない。だからもとこさんにアドバイスしてもらおうと思ったのだが、店員の巧みなトークで、だんだん、いちばん最初に見たフレームが良いような気がしてきた。このフレームは、いくらくらいなんだろう。
 「お兄さんは、いつも来てくださいますから、お安くしますよ。では、レンズですが……」
 彼女は値段を言わず、レンズの話に移ってしまった。なんだかこのフレームで決定みたいな雰囲気だ。このカウンターのフレームは、ミドルクラスのメーカー品が多く、小型軽量な反面多少値段が高いはず。度が強く乱視も入った僕の目にはレンズもそれなりの値段がするので、13万Wくらいだろうか。南大門では、安い物なら4~5万Wから買えるだが、品質もそれなりだ。ひとつランクを上げて、8~15万Wクラスの製品にすると満足度が高い。ちなみに、「安いよ」ばかりの店は避け、その製品がどうしてその価格帯なのか、理由を説明してくれる店で買うのが鉄則。
「若干、色が付いた感じが良いかと思いますよ。サングラスもいらなくなりますし……」
 レンズの話だった。いや、色付きはまずいでしょう。いかにも韓国の男という感じになりそうだし、色黒の僕が付けたら、それこそ国籍不明になる。色はないやつがいいんですけど。
「そんなことないですよ。こちらのレンズなら、一番色が薄くて目立ちません」
「お客さんは、表情が軟らかいので、このフレームとレンズが似合うと思います」
 怒濤のセールストーク。僕の表情が軟らかいなんて、初めて聞いた。催眠術にかかったように記憶が遠のき、気が付いたら、「一番最初のフレーム」と「一番色が薄いレンズ」に落ち着いていた。色が無いレンズがいい、という主張はどこへ行ったのか。
「そうですね、ぜんぶ併せて、10万Wで如何ですか」
 まあ、安かったので許す。30分後、早速完成した眼鏡をかけてみた。どうですか、もとこさん。
「カゲリさん! やっぱり、韓国人ですよ、それ!!」
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